熟れた果実をいつ食べるか

 
 

「そ、そんなところ…………きたない、よ」

「さっき洗ったから大丈夫」

「そういう問題じゃ………」

 俺は今、恋人の後ろの小さな穴、秘密の場所を真正面から覗き込んでいる。しかも男のだ。
この状況に対して顔色ひとつ変えない人間がいるとしたら、それはなんというか、大した奴だと思う。俺自身だって、誰これ構わずこんなことを好き好んでするわけじゃない。むしろほぼ誰に対しても無理だ。ただ彼が特別なだけ。

「ここ見ると、優一さん、すごく恥ずかしそうにするから、好きなんだよね」

「ば、か……当たり前だよ…!」

 誰にも見せない、誰も知らない。俺だけが知っている彼の秘密の場所。雪のように透き通る白い肌も、少し色素の薄い髪や瞳の色も、控えめに添えられた胸の飾りも大好きだったけど、小さくて張りのある丸みの隙間にひっそりと隠れた、絶対に誰も触れ得ないこの場所が、どうしてか俺の心をかき乱す。

「それに、優一さんのここ、かわいいよ」

 控えめな様子で、律儀に閉ざされたすぼまり。俺はそこを愛撫するためにいつも、おしりから腰のあたりがベッドから浮くくらい足を大きく開かせる。そこまでしなくても愛撫をする上で問題はなかったけれど、そうすると本当に恥ずかしいといった様子で、顔を真っ赤にして身体をこわばらせるものだから、いつもそうやって彼の身体を必要以上にさらけさせている。彼のそんな様子をじっくり堪能した後、唾液をたっぷり含ませた舌を、ゆっくりねっとりとそこへ這わせていく。すると身体を甘美にくねらせて儚い声を漏らすものだからたまらない。舌先ですぼまりを丁寧にほぐしながら柔らかくなるまで愛撫を繰り返す。

「……っ、…ぁ……やっぱ、や、だ…………っ……」

「だーめ」

 時々ちゅ、ちゅ、とわざとらしく音を立てたりして、彼の感覚をどんどん追い立てていく。こういう行為を繰り返すことで段々と彼の身体がいやらしくなっていくのを実感する。初めはかなり本気の足蹴りやグーパンをお見舞いされ、前途多難な雰囲気にもなったが、今はそこまで強い抵抗をすることはなくなった。俺がしつこいくらい何度もアプローチしたということもあって、半ば諦めといった様子で愛撫を受け入れてくれるようになったのかもしれない。今でも、完全には受け入れ難いようだったが、ちゃんとお願いすれば許してくれる。

「…っ…ん、…りょぅ……ぁ……だめ………」

 戸惑いと快楽が混ざり合う色っぽい声を漏らす。ふやけるくらい舌と唇でとろとろに溶かした入口。やわらく淫らな様子に仕上がったら、指先を1本だけ入り口付近に忍び込ませる。狭くて抵抗感の強い通り道を、まるでそこにいることを気づかせないくらいゆっくりとした仕草で、指を進めていく。

「優一さん、中、わかる?」

 本来何かを受け入れるために仕上がっていないそこは、指を入れた後すぐには動かさず、内側が馴染んでくるのを待つ必要がある。こちらから動けない分、彼にお願いして彼自ら内壁を締めたり緩めたりしてもらい、その感覚を覚えてもらう。初めは本当に困った顔をして嫌がっていた彼も、今では自らちゃんと動いてくれる。

「…ぅ、ん、…っ……」

「あ、ぎゅってなった」

「…っ、いちいち、言わない、の…!」

 彼が指の形を能動的に覚えていくという事実が非常に官能的だったし、その様子を見ているだけで恍惚とした気分になる。指をきゅっと締め付けたり、離れたりを繰り返す動きに合わせて指を少しずつ動かし、一本、二本と数を増やしながら、内側を馴染ませていく。ある程度馴染んでくると、どくどくと脈打つ熱い感触が現れ始める。実は入口に近いこの場所に彼の甘い場所が存在することを俺は知っていた。禁忌に触れるような興奮を覚えながら、俺は必ずこの場所にアクセスし、マッサージするように優しく愛撫する。

「ん…っ、ぁ……やだって、ば……そこ……」

「でも優一さん、気持ち良さそうな顔してる」

「……っ……ちが……っ……ぁ………」

 ぴくりぴくりと身体を震わせながらどんどん身体を紅く染めていく。
その箇所を少し強めに指先でとんとんとノックすれば、目元にぎゅうと涙を浮かべたりするものだから、俺の中の雄がむくむくと膨れ上がってくる。でも、あまり強い刺激を与えるのはまだ早いかもしれない。迫りくる興奮を抑えつつ、彼の様子を伺いながら甘美な場所をやさしくマッサージしていく。

「…ぃ、ぁ……っ…だ、や……」

 広げた足をぴくりと震わせながら、少し鼻にかかった鳴き声をほろほろと漏らす。その様子が本当に愛おしくて、もっと彼を気持ちよくしてあげたいと思わずにいられない。俺だけの、彼の隠された場所が少しずつ淫らになっていくのがたまらなくて、そろそろ彼と繋がりたいという気持ちがとめどなく流れてきてしまう。でも、まだ、もう少し、彼の身体が慣れるまで我慢だ。

「じゃあ、今日はここまでね」

 少し名残惜しい気もしたが、ぬるりと指を引き抜き、そのまま半勃ち状態の彼の中心に絡ませる。
後ろの快楽が消えないうちに彼にとって馴染みある雄の快楽に流れるように移行する。そうすることで彼の全身が大きな快感に包まれるんじゃないかと期待しながら、やんわりと中心を握りこむ。

「……っひゃ……っ……ぁ、まって………」

「やだ」

 驚いたような声を上げた彼の反応を後目に、追い立てるように早急にしごきあげると、すぐにそこは紅く硬く張り詰め出す。何度も触れてきた彼の中心は、どういった刺激を好むのか、どんな風に触れられるのを望むのか、もしかすると彼自身よりも知っているかもしれない。あっという間に絶頂寸前といった様子で全身を熟させる。

「…っ、ぁ……ぁ……りょ、う……」

「ほんと、優一さん、やらしい」

「………っ、……だって……ぁ………」

 ひときわ甘い喘ぎ声をあげると、指の隙間から白く温かな欲望が滴り落ちてきた。ぴくぴくと身体を震わせながら惜しげもなく果てる彼は、とても艶やかだった。快楽に染まった恋人の表情を眺めながら、俺はこの上なく満たされた気持ちに包まれる。
 彼は完熟な果物のように色っぽい。次はもう我慢しないで頂いてしまおう。
 じっくりと欲望に染めあげた卑猥な熟果。とてもおいしそうだなと、早くも次の夜に思いを馳せずにはいられなかった。

 
 
 
 
 
 
 
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