夏休みのショートショート

亮優の夏休み ショートショト!

※田舎で過ごす亮優の小説よりうんと短い、小話的なものを徒然とまとめました。各話あまり関連性はありませんが一部ちょっとつながりがあったりします。

 
 

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First Love

 

 世界はもともと凄く退屈なものだった。都会にいても、田舎にいても、どこか遠くの異国にいても、いつも同じだった。似たような風景の連続、似たような価値観の人の群れ、毎日同じ言葉をかける母親にも俺は飽き飽きしていた。だから、優一のいる宮城県に行く時も、その場所に対してそれほど期待は持てていなかった。車窓から見える風景も、それを眺めている俺の気持ちも、ただたんたんとたんたんと、電車のレールの音のように単調なものだった。
 本当になにもない無人駅に到着して、そこに広がる無味乾燥な田園風景を眺めて、でもその時は少しだけ、なんかいいな、と思った。何かが特別違うようには見えなかったし、本当に何の変哲もない風景だったのに。

「あ、亮! 亮だよね! おーい!」

 聞き覚えのある優しい声が後ろから聞こえてくる。それは間違いなく俺の大好きな優一の声だった。俺は胸の高鳴りを感じながら、風景をそぎ落とすように声のする方へ振り返る。自分のほぼ真後ろの、駅のホームの向こう側。ぶんぶんと嬉しそうに手を振る穏やかな人影。

「優一……」

 俺も思わず、ちょっとだけ手を振る。ほんのちょっとだけ。手を伸ばしたらそのまま彼の方に引き寄せられてしまいそうだったから、俺は振りかけた手をぎゅっと引きに戻して、自分の気持ちと一緒にポケットにしまった。とりあえず、俺が気が付いたという事実だけをアイコンタクトで優一に伝えつつ、駅のホームを足早に横切る。歩を進める足が、段々と速くなってしまう。俺を待ちながらにこにことほほ笑む優一に心が走り出しそうだったけど、とにかくなるべく冷静さを装いながら彼のもとに急いだ。

「亮、久しぶり! よかったぁ、無事に着けて」

「ああ……」

「最近どうだった? 元気にしてた?」

「あ、ああ………」

 俺は優一の言うことに対してただ相槌を打つことしかできない。ここに来るまでは色々考えていたのに、彼を目の前にするとどうしてか、言葉が喉にひっかかる。

「ふふ、亮どうしたの? 暑い? 顔真っ赤……」

「べ、別に…… た、確かに、ちょっと暑い、かも……」

「うん。じゃあ車乗ろう。中、涼しくしといたから」

「車……?」

 すぐそこには大きめのバンが停められていて、どうやら優一はこれを運転してここまで迎えに来てくれたらしい。それだけ彼の祖母の家はここから遠くて、おそらくもっと凄い田舎にあるということが分かる。そして何より、優一は車の運転ができるということにも驚きだった。

「お前、免許持ってたんだ……わざわざ、悪いな」

「僕の方こそ、ここまで来てくれただけで嬉しいよ。遠いのにありがとね」

 次は僕が東京に行かないと!と少しわくわくした顔で言う優一。俺はそんな優一の表情を横目で見ながら、車にさっと乗りこむ。確かに、中はひんやりとしていてちょうど良い温度だった。

「シートベルトしてね。それじゃ、安全運転でお送りしまーす!」

 陽気な声を上げながら、慣れた手つきで車を動かす優一は、なんだかちょっと大人っぽくみえた。ハンドルを握る横顔はとても真剣な面持ちで、そんなキリッとした雰囲気をまとうだけで、いつもの柔和で少し頼りない感じとは違って男らしく見えるから不思議だ。よく見ると、実は、彼の顔はなかなか綺麗なのかもしれない。

「亮、そんなにじっと見ないで~。ちょっと恥ずかしい……」

「べ、別に見てねぇし!」

 俺は慌てて優一の横顔から目を逸らす。ちょっと見ていただけのつもりなのに、分かってしまうものなのだろうか? そのまま左側の車窓に視線を移し、移り変わる田園風景にさらさらと意識を走らせる。広く澄み渡った空の青、そこからキラキラと眩しい夏の日差しが降り注いでいる。まだ収穫には少し早いが、生育しきっている稲が空に向かって力いっぱい背伸びしている。ビルや大きな建物がひとつもない、緑ばっかりの風景を見ていると、なぜ優一があんなに緑色の衣装のキャラクターをクリエイトしたのか何となく分かってくる。俺は思わず声に出して笑ってしまった。

「なーに? 思い出し笑い? スケベなこと考えてたんでしょ?」

「いや、そんなんじゃないけど…… いや、そうかもしれない」

 え、何それちょっと気になる、と楽しそうに笑う優一の声を聴きながら、優一といるだけでこんなにも目に映るものが変わるということに驚く。どこかでそんな歌詞の恋愛ソングを聞いた気がする。そして、そんなことを思ってしまう自分自身に少しだけ恥ずかしさを覚えてドキドキする。

 これからどんな場所に行くのだろう。そしてふたりで何をしようか。
俺は高鳴る胸を心地よく感じながら、湧き起こる気持ちをぎゅっと抱きしめた。
 
 
 
 

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Himawari

 

 今日は亮のリクエストで夏の風物詩ひまわりを見に、少し遠方へ足をのばすことになった。僕の地元からほど近いところに、ちょっとした観光名所のひまわり畑がある。僕も家族と一緒に何度か行ったことがあったから、久しぶりに行ってみたいなと思っていた。

 祖母の家にあった古いアルバム。
あんまり見られたくはなかったけど、亮が悪い顔をしながら「見せろ。さもなくばPKする」と物騒なことを言い出したので、恥を忍んでアルバムを一緒に眺めた。なぜか亮の方がちょっと照れた様子で「へぇかわいいじゃん」とか「あ、これ今の優一に似てる」とかぶつぶつ独り言を言いながらじっくり眺めていたから、僕はおとなしくそんな亮を見つめていた。いつか亮の家に行った時には、亮のアルバムを見せてもらおう。たぶんきっと、とってもかわいいんじゃないかな、と思った。そんな数ある写真の中から、亮はひまわり畑で遊ぶ僕の写真を見つけた。
 こんな絵に描いたような、映画のワンシーンみたいなひまわりだらけの場所があるのかと驚いた様子で聞いてきたから、僕は亮のイメージを現実にしてあげたくて、このひまわり畑まで連れてきたのだった。

「うわっ、マジか。すげぇ、本当にこんな場所あるんだな!」

 あの写真と同じだ!と嬉しそうにひまわりを見渡しているから僕も凄く嬉しくなってくる。観光客と思われる団体もちらほら見えたが、人も少なく、とても開放的だ。

「優一、あの写真みたいにさ、撮ってやるよ。ほら、そこ立ってピースってさ」

「もう、亮……。人のことで遊ばないの……」

「いいから、ほら、はいチーズ!」

 完全にからかっているとしか思えない亮の様子に、ちょっと恥ずかしくなったけれど、無邪気に楽しんでいる亮がとても愛おしくて、彼の提案に乗ってしまう。僕はどうしようもなく亮に甘い。あの写真を思い出して、カメラに向かって力強くピースのポーズをする。亮が面白そうなものを見るかのような顔で、シャッターを切り、撮れた写真を見てけらけら笑っている。

「ほーら、次は亮の番だよ。僕は別にもういいから」

「いや、俺はいいって!」

「だ-め! ほらカメラちょうだい!」

 僕は亮の手にある小さなコンデジカメラを奪い取り、亮をひまわり畑の前に立たせる。亮と同じくらいの背の高さ、顔の大きさのひまわりたちが一斉にカメラの方を向いて笑顔をキラキラと向けているように見えた。

「ほら、亮も笑って~!」

「いや、俺は、別にいいって!」

「はーーーい、チーーーズっ!」

 僕はちょっと大げさに叫んで亮を煽る。シャッターを切っても亮は相変わらず顔を背けて口をへの字に尖らせていた。そんな顔も、とても亮らしいと言えば亮らしいが……

「もう! せっかくのひまわりが台無しだよ!」

「だから、俺はいいって言ってるだろ!」

 ちょっとムキになる亮は、相変わらずというか案の定というか、やはり写真が苦手なようだ。このままだと全部しかめっ面の写真になってしまう。

「うーん、しょうがないなぁ。じゃあさ、一緒に撮ろうよ。それならいいでしょ?」

 せっかくの亮との想い出写真。僕だっていつもは撮られるのは苦手だけど、亮と写るのなら話は別だ。

「別に、俺は……写真なんかどうでもいいけど…………優一が撮りたいっていうなら……」

 ふふ、正直そう言うんじゃないかって思っていたんだよね。でも、そんなこと言ったら照れて怒って写真を撮らせてくれないだろうから絶対に言わない。僕は可能な限り亮に感謝の態度を示してから、亮の隣にぴったりと寄り添う。そして、コンデジカメラを自分たちの方に向ける。

「うーん、このへんかな。このカメラだとよくわからないね。とりあえず撮ってみるよ! はい、チーズ!」

 僕はカメラのスイッチを押すタイミングで、ぎゅっと亮の肩を引き寄せた。パシャ!という、懐かしいシャッター音を聞いた後、僕はすぐさま撮影した写真をカメラのフォルダで確認してみる。すると、なかなかいい感じの構図で記念写真が撮れていた。

「わぁ、いいね! いい感じに撮れてるよ!」

「そ、そうか。良かったな……」

 ちらっと写真を確認すると、恥ずかしそうに顔を背けてしまう亮。僕はそんな亮の様子を楽しみながら、写真を拡大して確認する。すると、これまたすごく恥ずかしそうな顔した亮が満面の笑顔の僕と、満面の笑顔のひまわりと一緒に映っていた。

「ふふ、すごく良く撮れてるよ。帰ったらプリントしよ」

「勝手にしろっ……」

 撮影するたびに恥ずかしそうな、照れ臭そうな、そんな表情をたくさん見せてくれる亮と、帰ってプリントした写真を見て顔をさらに真っ赤にするであろう亮。今日はきっと二度も三度も楽しい思いができそうだ。
 僕はカメラの小さな画面から目を離し、この世界の大きくて開放的な青い窓をぐんっと背伸びをするように仰ぐ。
太陽の方を向いて一生懸命に笑う若いひまわり達。彼らのおかげでこんな素敵なひと時を過ごせるのであれば、ちゃんと感謝しないといけないね、そう思った。

 
 
 
 
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Movie

 今日は珍しく天気が悪い。
せっかくの夏の休暇なのに、こうも天気が悪いと少し勿体ない気持ちになってくる。俺がふてくされていると、優一は「涼しくなっていいじゃない」と相変わらずお気楽モードで畳に寝転びながら携帯端末をいじっている。確かにこの頃この国の夏は暑過ぎるから、雨で空気が少しでも涼しくなるのであればありがたいが…

「優一、今日何する? これじゃどこも行けねぇじゃん」

「雨の日はやっぱり、ゲームじゃない?」

「………。いつもやってるじゃねぇか……」

 にこにこしながらM2Dを俺の前に差し出す優一は、本気なのが冗談なのか分からない。一応この家に来てからも1日置きくらいには、夕食の後にThe Worldにアクセスして、カナードの手伝いをしたり、アリーナや痛みの森なんかに通ったりしてわりとそれなりにゲームライフはかかさずという感じではあった。俺も優一もゲームという圧倒的な共通の趣味があるから、どんな時でも暇を持て余すことはない。ただ、いくら雨とはいえせっかくの休暇に昼間からゲームをするというのは少し気持ち的にはばかられる。

「ゲームもいいけど、何かこう、別なことしないか?」

「別なこと? うーん、亮は何がしたい?」

 確かに提案してみたものの、意外と思いつかない。いつも優一といるときは、ゲームをするか、観光するくらいしかしてきていない。外に出て一緒に色々なものを見て回る時間は本当に楽しかったし、ゲームをしている時間も、言うまでもなく最高に楽しかったから考えたこともなかった。俺らからゲームやデートを取り上げたら大したものが残らないんじゃないか…と、一瞬脳裏がヒヤリとする。

「昼からセックスとか」

「え、いや、今居間におばあちゃんいるからダメだよ」

「冗談だって……」

 優一とのセックスは、基本的に彼の祖母がいない時間限定になっている。最近は部屋が離れているのをいいことに毎晩まぐわってしまっているが……
 いつもなら、近くの友人の家に遊びに行ったり、畑仕事をしたり、地元の公民館などに足を運んでいるようで、わりと不在なことが多いのだけど、こうも雨だとさすがの祖母も家で過ごしているようだった。

「たまには映画でも観る? この端末からも見れるよ」

携帯端末をいじりながら、ふと、優一が独り言のようにそう提案する。

「あ! いいじゃん映画。そういや最近見てないし」

「じゃあ映画見ようか。夏ならやっぱホラームービーかなぁ………」

「ホラーか………」

 正直ホラー映画はあまり好きではない。いまいち見慣れていないせいか、映画に集中できた試しがないのだ。もしかしてそれを、怖い……というのだろうか。しかし、優一が観たいのであればここは観るべきか。しかし可能であれば違うジャンルの映画を観たいかもしれない。

「どうしたの? もしかして、亮、ホラー苦手? 怖い?」

 なんか以前にも優一にそんな感じのことを言われた気がするが、何のことだったか思い出せない。しかし優一のやつ、いつも俺の心を見透かしたかのように物を言ってくるから恐ろしい。

「べ、別に怖かねぇよ! さっさと用意しろよ!」

「じゃあ、夏休みホラー特集ってやつから良さそうなやつ選ぶからちょっと待ってね。楽しみだな~」

 どうやら意外と優一はホラーが好きらしい。可愛い顔して意外とゲテモノ好きというか、人は見かけによらないというか……。 以前彼の趣味や好みを知りたくて尋ねたら、珍獣を研究するサークルに入っていると言っていたし、やはりゲテモノ好き……。 いやいや、知的好奇心が旺盛なのかもしれない。

「あ、これ良さそうじゃない? 最恐Jホラー! 田舎のペンションに遊びにきた学生たちが謎の怪現象に襲われ逃げ惑う…! 今の亮にぴったり!」

「お前…」

 楽しそうに画面を俺の方に見せつけてくる優一は、少し狂気じみているようにも感じた。俺は不穏な雰囲気溢れる画面をあまり直視できないまま、ああそれでいいよ、さっさと流せよ、とあしらってしまった。
 相変わらず能天気な顔をしながら、端末上の再生ボタンを押す優一。お笑い動画とか、動物系癒し動画を流すかのように軽やかにタップするもんだから恐ろしい。俺の気も知らないで…

「亮、こっち来て。ちょっと画面小さいけど見える?」

「ああ、大丈夫。このくらいがちょうどいい………」

 大画面でなんて見れたもんじゃない。二人掛けの座椅子に腰を下ろすと、優一が肩をぴったりと寄せて寄りかかってくる。俺の目の前に端末をかざしながらちょっと嬉しそうにしている。

「亮、途中で逃げちゃだめだよ」

「ばっ……! 誰が逃げるかっつーの! お前こそ途中で泣きべそかくんじゃねぇぞ」

「ふふ、僕は絶対、大丈夫だと思うよ」

 そう言いながら、優一は俺の腕にぎゅっと腕を絡ませ、しっかりと身体をホールドしてくる。これは逃げるにも逃げられそうにない。こんなことなら、いつも通りゲームをしておくべきだったかもしれない。

 この後、おぞましい幽霊と怪現象に襲われるホラームービーを観ることになり俺は本気で泣きそうになった。俺が目を背けたり、声にならない悲鳴をあげたりすると「亮、怖いの?大丈夫?」とちょっと楽しそうに心配されるから、「怖くねぇし!」「ちょっと驚いただけだから」などと無駄に強がってしまい、結局最後まで見ることになった。ちゃんと正直に途中で辞めるよう言うべきだったかもしれない。本気で心臓が止まりそうだった。

 そして、映画を見終わってからというもの、やたらと優一が怖い話をしようとしてくるようになってしまい、俺の夏休みはいい感じに涼しくなるのだった。

 
 
 
 
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Drive

 優一が運転する車に乗って、少し離れた沿岸の街を訪れることになった。
彼の祖母の実家は温泉が湧く、山の奥地という感じだったから、滞在中にまさか海が見れるとは思っていなかった。山育ちの優一は海にひと際憧れのような、特別な思いがあるようで、一緒に行ってみないかと提案されたからにはやはり乗るしかなかった。
 東京の地元からほど近いところに、お世辞にもあまりきれいとは言い難い海、湾はあったし、少し足を延ばせば人の多い海水浴場やプールなんかもあって、家族や友人と水場に行くことは多かった。しかし、この宮城の、自然が生み出す浜辺のようなものはお目にかかったことがなかったので、少しわくわくした気持ちを抱えながら車に乗り込んだのだった。

 優一の運転は、おそらく、非常に安全運転そのものだった。時々見た目とは裏腹な運転をするという話も聞いたが、優一の場合は、まさに優一らしいとしか言いようがない。自分はまだ車のハンドルすら握ったことがなかったので、正直ピンとこない部分が多かったが、少なくとも自分の父や母よりもかなり丁寧な運転のように感じた。

「もう少しスピード出していいと思うぞ」

「でも、ここ60までだから」

「親父が60なら80出すのが普通だし。80なら120出すって言ってたぞ」

「それは、凄く、手練れだね……」

 60と言われれば56くらいまでしか出さないから、どんどん後ろの車に抜かれてしまう。別に急いでいるというわけではないからいいのだけど、なんだかすごくゆっくりに感じてしまうのだ。

「ほら、今日は亮も乗ってるから、安全運転で、ね?」

 いつもだったらスピード出すのか?と聞いてみたくなったが、もしかしたら出すかもしれないなと思いつつ聞くのはやめておいた。俺のいない時の優一は、知らなくていい。別に俺に見せてくれている優一だけで十分だ。
 海辺近くの宿を1日だけ取ったらしく、今夜一日だけ外泊だ。優一と外泊するのは初めてだったから、それもまた心を高ぶらせてくれる。そして今日はなかなかの爽快な晴れ!夏の青空!こんな旅日和な日はあるだろうか?

「なぁ、次のパーキングエリアに寄らね? こういう場所のそういうとこ、ちょっと行ってみたい」

「そうだね、次かその次あたりに、大きい休憩所があるから、寄ってみようか?」

「よっしゃ! じゃ、後は宜しく!」

「あっ! また寝るつもりでしょ! もう……次来るときは亮も免許取っておいてね」

「いいんだよ、俺は。東京は電車で十分! 車いらねーもん」

「うわっ、都会っ子発言!」

「へへ、まぁ、気が向いたら取るよ。任せとけって!」

 俺は助手席でふんぞりかえりながら、ちらりと優一の横顔を盗み見る。もともとあまり日頃から運転をするわけではないらしく、ハンドルを握る度に緊張すると言っていた。その言葉通りの、正面をまっすぐ集中して見つめている。その姿は、真剣そのものだった。そんな姿も、ちょっと素敵だなと思ってしまう。

「安全運転でお願いしまーす!」

「はーいはい。お客さんはそこでくつろいでいてください」

 ちょっとむくれた表情を浮かべたが、どことなく嬉しそうな様子で正面を見据えていた。彼のちょっとしたいちいちに、どうして俺はこんなにも心がときめいてしまうのだろうか。
 これ以上気持ちを溢れさせてしまっては、優一に感じ取られてしまいそうだったから、俺はさっと目蓋を閉じて自分の内側に隠れた。
 次に目蓋を上げたとき、また優一の姿が見れると思うだけで、とても嬉しくて仕方なかった。

 
 
 
 
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Check in

 海辺近くの宿に着いたのはお昼を過ぎた頃だった。俺はてっきり旅館のような場所を想像していたのだが、少し小洒落たホテルのような場所だった。いつも畳ばっかりだから、たまにはこういう場所に行ってみたかったんだ……と少し照れ臭そうに話す優一はいつもよりちょっと浮かれた様子だった。
 一応目の前に広がるのは海、太平洋だ。エメラルドグリーンの夏の海!という感じではない、いわゆる日本らしい海の雰囲気ではあるが、このちょっと洒落た部屋の雰囲気と相まって悪くない。

「へぇ~いいじゃん!なんかちょっとバカンスっぽくて」

「へへ、いいでしょ。東京にはこういうホテルいっぱいあるんでしょ?」

 いいなぁ~憧れる、と呟きながらさっそく荷物を開く優一。一泊だからそれほど荷物は持ってきてないから別に整理するほどでもないと思うのだが。

「ねぇ、亮、水着持ってきた?」

「え!? 持ってきてねぇよんなもん」

「そうだと思ったんだよね~。僕の家、山って言ったしさ。だからほら! じゃじゃん!」

突然、小さなトランクの中から真っ赤な海パンを取り出し俺の前に高らかに見せびらかしてきた。

「なんだその派手なパンツは……」

「きっと何も考えず手ぶらで来るであろう亮のために持ってきたんだよ! ちゃんと着替えてね!」

 わざわざ買ったのか、それとももともと優一が持っていたものなのか気になって仕方なかったが、どちらの回答にせよあまり喜ばしい気持ちにはなれなかったので、俺は黙ってその水着を受け取る。別に色はちょっと派手だが、ごくごく普通の海パンだ。ビキニとか持ってこなかっただけ良しとしなければ。

「せっかくいい天気だしさ、さっそく泳ごうよ!」

せっかくのバカンスだ。俺は快く優一の提案に乗ることにした。

 
 
 
 
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What is color?

 

「亮、それ似合ってるよ」

先ほど渡された海パンを見ながら優一が嬉しそうな目をして俺を見つめる。

「海パンに似合うもくそもないだろ」

「でも、亮はね、白とか黒ばっかり着てるけど、赤も似合うと思うんだよね。主人公レッドって感じで」

赤色は嫌いではないが着るとなると話は別だ。どうしても、何だか落ち着かない。

「俺が主人公ならお前は、ほんと緑って感じだよな。青でも黒でもなくて。その緑の海パン似合ってるぞ。」

「ほんと? ありがとう! 緑は好きだよ。それに緑だって結構主人公に多い色なんだよ」

 ちょっとドヤ顔をする優一を、はいはいとあしらって、ちょうど緑色に変わった信号を渡る。
夏の日差しで熱々になったアスファルトからゆらゆらと湯気が揺らめき、眩暈がするくらい世界が白くて眩しい。

「まるで信号みたいだな。俺ら」

「本当だね」

 
 
 
 
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Beach

 

 人がいない。海なのに人がいない。まず一番の感想はそれだ。
どこに場所とりをしようが関係ないし、というか場所とりの必要がない。手頃なロッカーに荷物を預け、俺らは持ってきた浮き輪をのんびりと膨らましていた。

「ね、亮ってさ、浮き輪とか膨らませないでしょ?」

「え、な……なんで……」

 優一が息をうまく吹き込みながらゆっくりと浮き輪を膨らませていくのを眺めるていると、突然そう指摘する。確かに、浮き輪なんてあまり自分で膨らまさないから、言われてみると正直ちょっと不安だ。

「いや、なんか亮ってあんまり腹式呼吸とかできなそう」

「お前、俺にどんなイメージ持ってんだよ」

「ゲームとかすごい上手いのに、なんか時々すごい不器用だよね」

「別に出来ないとは言ってねぇだろ!」

「じゃあ、これ、残り入れてくれる?」

 膨らましている途中の浮き輪を優一がすっと突き出してくる。

「そ、そこまでやったなら最後までやれよ」

「えー、まぁ、別にいいけど」

 優一はそれ以上俺に強要はせず、すんなりと引き下がって空気入れを再開した。別に浮き輪がどうこうと言うわけではないが、優一は意外と器用だ。というか、ゲームも正直上手い方だと思う。あまり直接伝えたことはないが、他の仲間たちと比べても別段劣っていると思わなかったし、少なくとも優一の戦い方、サポートの仕方はとても戦いやすくて良かった。

「できたよ! じゃあ行こっか!」

「あ、ああ……」

 パンパンに張った浮き輪を抱えて優一が浜辺に向かって歩き出す。俺もすかさずその背中についていく。するとふと、優一がこちらを振り返り、俺の視線と彼の視線が交錯する。

「…………?」

「行こ」

 そう言うと、彼は俺に向かってすっと腕を伸ばし、手のひらをかざしてきた。俺はその真っすぐ伸ばされたを指先見て、思わず辺りをきょろきょろと見渡してしまった。でも、まっすぐに俺に向けてさし伸ばされた指先を俺は無視することなんて出来そうになかった。

「ああ……」

 俺はその指先をぎゅっと握りしめた。
優一が嬉しそうに微笑んでいて、その指先に誘われるように、夏の光の下へ引き寄せられていった。

 
 
 
 
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Pure Love

 

「浮き輪は膨らませられなくても、こんくらいの、キスはできる…ぜ…」

「…っふ、ぁ………え、やっぱ、浮き輪だめなんだ……」

「……っるせっ…!」

「…ふふ、別に浮き輪くらい気にしないでいいのに………」

「……なぁ、優一…………その、気持ちいいか?」

「……? なん、で……」

「いや、さっき俺のこと不器用って言うから。もしかして、その………セックスとか、いまいちなのかな…って……」

「え!!? そんなこと気にしてたの? あはは!………………僕は亮の、キスも、全部………好きだよ」

「本当か……? 気持ちいいか…?」

「…………うん」

 すごく不器用なキスも、不器用な愛撫も全てが愛おしい。たどたどしく触れる指先が、時々欲望に流されていっぱいいっぱいになって、ちょっと乱暴になったりするところも、僕は全部愛おしいと思っている。
でもそんなこと言ったら、きっと亮はもっと困ってしまうだろうから絶対に言わない。亮が一生懸命考えて僕に触れていると思うだけで、僕の身体がどんどん気持ちよくなっていくのが分かる。それに僕は亮の素肌の心地や匂いがすごく好きだ。抱きしめられるだけですごく気持ちいい。

「優一?」

 でもこれも今はまだ絶対に言わない。
もう少しだけ悩んでいる亮を眺めていたいだなんて、ちょっと意地悪なことを考えてしまうんだ。
 
 
 
 
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Sunset Fire

 

 それは燃えるような夕焼けだった。
明るい茜色で染まった空はまるで火事でもあったかのようにオレンジやピンク、赤色で彩られていて、光が光として本領を発揮しているといった、美しい輝きを放っていた。

「わぁ、すごい夕焼けだねぇ。こういう夕焼け、時々なるけどいつ見ても綺麗だよね」

「そうだな。東京でも時々、こんな感じになるぞ」

「本当? じゃあきっと今の東京もこんな空なのかなぁ」

 それはどうだろう。宮城と東京だとだいぶ離れているし、東京が晴れの時、宮城が雨のこともある。でも確かに、俺たちは同じ時間を少しずれた時の中で共有しながら生きている。

「マク・アヌの夕日とはちょっと違うな」

「そうだね。たぶん、マク・アヌは雲がないから。ほら、今日は薄い雲がわーってかかってるから、それが染まってオレンジなんだよ」

「ふーん。そういうものなのか?」

「えへへ、わかんない。でも、今そういう風に見えたから……」

「なんだよ、それ」

 俺は思わずふっ、と笑ってしまった。
率直な感想を述べる優一は、本当に優一らしくて、そんな彼とちょっと特別な夕日を眺めているこの時間を愛おしく感じた。
 日に日に優一に対して愛おしさが増すものだから、優一が言うこと成すこと、どんなものにも感動してしまうから、胸がざわざわとくすぐったい。こんな心持ちを、こんな感情があることを俺はずっと知らなかった。だけど、これは凄く幸せなことなんだと思う。

「マク・アヌの夕日はいつも同じだけど、ここは違うんだな」

「そうだよ亮。毎日違うんだよ」

 当たり前のことを言ったのに、うんうんっと頷きながら嬉しそうな顔を浮かべているから、本当に困ってしまう。
 優一が、シラバスが、マク・アヌの夕日を独りで眺めていたことを思い出す。
彼はありもしない潮風に当たりたいと言いながら港に通っていた。偽物の夕日と想像上の潮風を受けに行くシラバス対して俺はなんて声をかけるべきか分からなかった。でも、今こうして一緒に、同じ夕日と潮風を感じながら手を握っている。目に映るオレンジ色の光も温もりも、磯の香りも、そして優一の指先も、これは紛れもない現実なんだ。

「帰ったらゲームすっか?」

「いいよ。最近ちょっとサボり気味だったし。海にいることガスパーに自慢しよ~!」

 顔をふんわりと綻ばせながら笑う優一。
今、俺が感じている全ての現象がこの上なく愛おしくて……
俺はこうして彼と一緒にいられる時間が、永遠に消えないことを願ってやまなかった。

 
 
 
 

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Sleepe

 

 あれ?珍しく亮が寝ている。
僕はあまり亮が寝ているところを見たことがない。だっていつも亮の方が早起きだから。でも、今思うと他人の家族の家に来ているから緊張して眠りが浅いのかもしれない。そう思うとちょっと申し訳ない気持ちになったけれど、今、珍しく、隣でうとうとしている。

 僕も本当はちょっと眠かった。でも運転中、ましてや隣に亮がいるとなっては、居眠りなんかできやしない。少し渋滞に捕まってしまって、あまり動きのない車窓からの風景はどうしても眠くなってくる。まぁ、渋滞に関わらず、田舎町のドライブ風景はだいぶ眠気を呼び起こすものではあったが…
 車内にあったCDをかけてみたら、祖母の好きそうなフォークソングばかりで、あまりテンションもあがらなかったので、テキトウなラジオをかけてぼうっと過ごしていた。僕も眠かったのもあり、しばらく会話もせず車窓を眺めていたから、亮も眠くなってしまったのだろう。でも、この見知らぬ街、見知らぬ家族と過ごしているから、少し疲れが溜まってきているのかもしれない。僕はそのままそっと放っておくことにした。
 車の動きが完全に止まったそのタイミングで、僕はちらりと亮の寝顔を盗み見る。いつものキラリと光る強い眼差しは静かに閉ざされ、柔らかそうな唇がうっすらと開かれている。ふっくらと滑らかに揺れる頬、伏せられた目蓋にふわりと伸びる長めのまつげがとても綺麗で……
 思わずそんな亮の顔に見とれていると、後ろからプップー!!っとクラクションを鳴らされてしまう。

「わああ!」

 僕はすぐに前方に集中して車を動かす。危ない危ない、うっかり気を取られてしまった。
でも、おかげで眠気もいくらか飛んでいってくれた。僕の動揺にも関わらず亮まだ眠りの世界に誘われているようだ。

「もうすこし、休んでていいからね。」

 僕はそっとハンドルを握りなおした。
 
 
 
 
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Sky Blue

 

 縁側でぼうっと空を仰ぐ。澄み切った青い空に、ふわり、ふわりと浮かぶ汚れ一つない銀色の雲。大きく開かれた空にどっしりと浮かんでいたはずのそれらは、いつの間にか少し小さくなったようで、それでも名残惜しいといった様子で夏の面影を描いていた。

「亮。はいこれ。アイス」

「ん。ありがとう」

 優一がパタパタと足音を鳴らしながら縁側の向こう側から走り寄ってくる。台所から昨日買い足しておいたアイスを持ってきてくれたようだ。

「亮はバニラだよね」

「ん。優一は今日何にするんだ?」

「えへへ、今日はね、この夏限定パイナップルココナッツ味」

 嬉しそうな顔をしながら、いかにも新商品といった雰囲気のちょっと賑やかなパッケージを俺の前にずいっと見せつけてくる。俺は何年も前からあるシンプルなバニラのパッケージの方を受け取り、袋をパリっと破いて咥えた。優一も俺の隣にぴったりと腰を下ろし、新商品のパッケージを破いてそれをぱくっと口に咥える。無意識なのだろうけど、優一は肌が触れるくらい近くにいつも座る。彼の祖母がこんなところを見たらちょっと不思議がるんじゃないだろうかと少し心配になるが、当の本人は全然気にしていない様子だから、とりあえずその心地よさに甘えてしまう。

「ん!これは!すっごいココナッツ!!」

 じゅるっと音を立てながら新しい味を楽しむ優一は俺より年上の大学生には見えないくらい、無邪気で純粋な感じがした。じゅる…とか、ちゅぱ、とか音を立てられると、どうしても先日の夜のことを思い出してしまい、俺の方が心の汚れた大人のような気がしてくる。

「亮、食べてみる?美味しいよ?」

「べ、別にいらねぇよ!」

「え、そう?」

 わくわくといった様子で食べかけのアイスを差し出してきた優一の提案を思わず断ってしまう。
俺の頭の中には既に、昨夜優一に咥えてもらっていたあの官能的な情景が浮かんできてしまって、ましてやそんな食べかけのアイスなんて……
 しかしそんな俺の心の内を知らない優一は、ちょっと残念そうな顔をするものだから、俺は浮かんでしまった浅ましいイメージをこの澄み切った空にかなぐり捨てた。

「あー!わ、わかったよ。食えばいいんだろ食えば!ほらよこせよ!」

「ふふ、ほら、やっぱり食べたいんじゃん。はい、あーんして」

「……っ……お、まえなぁ!……調子乗んなっ!」

 俺は思わず優一の脇腹に一発軽いフック技をお見舞いし、「わぁ」と声をあげてよろめいた隙にそのアイスを奪い取った。そしてひとくち、その棒状の甘い氷の蜜を口に含む。すると口いっぱいに甘酸っぱい、でもどこか異国の雰囲気のある魅惑的な味が口いっぱいに広がる。

「ん、確かに。なんかすごい南国………」

「ね!でしょ?すごい常夏って感じの味!」

 満足げに笑う優一。見てるだけで、色々なことがどうでもよくなるくらい、彼は俺の傍で優しく幸せな空気を作り出してくれる。優一と一緒だったら、こんな南国チックなフルーツの似合う異国へ行ったとしても、きっと楽しいんだろうな。俺はそんなことを思いながら、優一の口にずいっと自分のバニラ味のアイスを押し付けてみる。すると素直にぱくっと咥えて受け取るものだから本当に参ってしまう。

「うん! 亮のバニラ味も美味しい。でも、それ食べる亮、なんかちょっとエッチ」

「……!!!? て、ってめぇ…! 何言いだすんだ!」

「あはは、冗談だよ冗談!」

 くそ、人の気も知らないで!と思ったが、おそらく優一は俺が考えていた少々淫らな妄想に気が付いていたんだと思う。いつも俺の考えてることを見透かして、それを楽しそうに弄んでいるような気がする。
 俺は優一がちゅるちゅると舐めていたバニラアイスを奪い返して、代わりに常夏味のアイスを口に差して戻した。

「あ! あの雲さ、ちょっとチムチムに似てない?」

「あ? どれだよ。大体どれも一緒だろ」

「え、全然違うよ。ほら、あれ! 頭と耳のあたりが、ほら!」

 俺は優一が指しているであろう方向をぼんやりと眺める。なんとなく、何か生き物のような形に見えなくもない雲がいくつかもくもくと浮かんでいる。どれだか分からねぇ、気のせいだろとぼやくと、必死にほら、あの大きい雲の、そのちょっと下のあたりにある……などと丁寧に説明を始める。俺は半分聞いて半分聞いてない状態で慣れ親しんだバニラ味をゆっくりと堪能する。

 縁側の前に広がる、程よく手入れの行き届いた裏庭には、もう何個めか分からない朝顔のつぼみがぽつぽつと延びてきている。特に決めたというわけではなかったが、毎朝俺がそれらに水を与える任務を任され、しかし確実にすくすくと育っては咲いて、そして翌日には散る、そんな花に少しだけ愛着がわき始めていた。
 縁側の隅に下げられた南部鉄器の涼しい音を奏でる風鈴が、時々、静かに俺たちの間に流れ込んでくる。少し日の傾きだしたこの時間に、その音はとてもお似合いで、それらを当たり前のように感受している優一をとても羨ましく思った。

「亮、美味しい?」

「ん? あ、ああ…」

 相変わらずチムチムがいるらしい広い空を眺めたまま、優一は独り言のように突然そう呟いた。
彼はきっと、この広く澄み渡る空の色も、風と鈴の音が織りなす静かな協奏曲も、そしてそれらに対峙している俺という存在も、全部をその全身で感じてとても満たされているんだと思う。そんな彼の隣にいられるということが、とても贅沢なことに思えた。

「優一、楽しい?」

「ん? ふふ、うん。すっごく……」

 俺の問いかけに、優一はふわりと俺の方を見た。とても嬉しそうに微笑む彼につられて思わず俺も口元が緩んできてしまう。でも、なんだかそんな分かりやすい表情を見られてしまうのが恥ずかしくて、俺は思わず優一から顔を背けてしまった。

 ちりん、と、ひと際綺麗な風鈴の音が、俺たちの間をさらりと流れて消えていった。

 
 
 
 
 
 
 
 
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