今日は珍しく土曜出勤だ。
金曜日に、やれ休みだやれ飲むぞと騒いで帰った義眼の相棒を尻目に、俺は今日のことを思って早々に帰宅したのだ。
休みとはいえ、緊急の招集があれば休暇なんてすっとんでしまうけど、一応形だけは週休2日制のため毎日交代で誰かが9課に残るよう設定されている。土日は家族のこともありなるべく休めるよう頼んではいるが、たまに順番が回ってきてしまうのだ。
「確か、今日は俺と…」
自分の電脳にアクセスし、スケジュールをチェックする。今日の”番犬”は俺とサイトーだった。
先日起きた事件の始末書がまだ終わってなかったので早めに出勤したわけだが、センタールームにはもうサイトーの姿があった。
「おはよう。」
「ああ、おはよう。早いな。」
サイトーは、大きなガラス窓の前で、清々しい表情で俺に挨拶した。
そして、その生身の右手には一本の牛乳瓶が収まっていた。きれいに刈り揃えられた、形の良い坊主頭に、引き締まった筋肉。その機能的な指先に収まった牛乳瓶が朝日に晒され、羨ましいくらいに調和した光景だった。
「サイトー、毎朝牛乳飲んでるの?」
「ああ。これだけはかかさないんだ。」
サイトーは、少し照れくさそうに口もとを歪ませて微笑んだ。
「お前も飲むか?」
「え、いいの?」
「ああ。」
短く応えると、サイトーは俺に牛乳瓶を差し出した。
俺は遠慮なく瓶を受け取り、一口喉へ流し込む。口の中に独特な臭みと、舌を包むような感覚が広がり、同時に懐かしいような、暖かいような感覚が込み上げてきた。俺は、なんだか恥ずかしい気持ちになり、慌ててそれを一気に飲み干す。それを見たサイトーは少し驚いたような目をしたが、歯を見せて静かに笑った。
「これでお前も、俺の仲間入りだ。」
その言葉は、俺にとって、とても心地よい響きだった。
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朝の雰囲気が似合うサイトグ