攻殻エアプチオンリー企画ページ

2020年8月23日 攻殻機動隊オールキャラプチオンリー 『9かしてもいいですか?』に合わせて作成した、エアプチ特設ページです。
▼本家本元の企画者様Twitter

エアプチ参加といっても海外発送やネットプリントが現状対応しておらず、本の通販やプリントはとくにございません(すみません…)しばらく、リクエストや質問などを受け付けておりますのでお気軽にご連絡頂ければ幸いです。  終了しました

【企画内容】
・「9課の休暇」をテーマに描き下ろしたペーパーラリー用の絵・小説をまとめて掲載しております。
・リクエスト、質問、個人的なお話しもろもろ受付中です。お気軽にどうぞ。(個人的に返信が必要な場合は、コンタクトかツイッターのメッセージからどうぞ) 終了しました


     
     
     
     
     
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    9課の休暇の過ごし方 – Section 9 Vacation

      
     

     
     
     
     
     
     

    AOI & TOGUSA

    を読むのが好きな人に出会えて僕は本当に嬉しかった。
    この電脳の時代に紙媒体を好き好んで集めるという、あまり褒められはしない趣味に対して、嫌な顔ひとつすることなく付き合ってくれるだけで十分だった。それなのにこの人はどんどん僕を甘やかしてくる。

    「トグサさん、この本一緒に読みませんか?」

    子どもじゃあるまいし、本はひとりで読むものだろうと自分自身に突っ込みを入れながら問いかけてみる。
    そんな自嘲気味な僕の心持ちにも関わらず、こんな気まぐれな提案に彼は楽しそうに乗ってくれた。
    初めはただ静かにページをめくるだけだったけれど、数ページ読んだところで彼は声に出して本を読み始めた。
    きっと彼の子どもたちにもこうやって絵本を読んであげているのかなと思いながら、優しくて丁寧な朗読に耳を傾ける。

    ああ、こんな素敵な休暇があっていいのだろうか。

     
     
     
     
     
     

    BATO & TOGUSA

    さえあれば、いつも映画の話をしていた気がする。
    仕事の合間に悪趣味な外部記憶にアクセスしながら映画について語り合うのはなかなか楽しいものだ。
    しかし相棒という役回りである以上、仕事で長い時間を共に過ごすことになるから、休みの日ぐらいは顔を合わせないようにしていた。
    でもまぁ別に暗闇で映画を見るんだったら顔をつき合わせるわけじゃないし、たまにはいいかと思ったのだ。自分のセーフハウスのひとつに古い映写機が置いてあることを話すと、彼は目を輝かせてこの部屋にやってきたのだった。

    「おい旦那。この映画マジかよ……」

    古いフィルムに焼き込まれた物語を光の粒を通して壁に再生する。
    そこで描かれる物語は今の俺たちにはあまりにも綺麗すぎたかもしれない。

    「ああ。こんなにいい映画をまさかお前と見ることになるなんてな。映画が泣くぜ。」

    「俺もそう思ってたところ。」

    相変わらず可愛くない減らず口を叩く。

    「あ、旦那。さっきから思ってたんだけど、このポップコーン生体用だよ。大丈夫?」

    「ああ…そりゃぁ、あんまり大丈夫じゃねぇなぁ…」

    美しすぎる映画に夢中だったせいか、それとも貴重な休暇を相棒なんかと過ごしてしまったせいだろうか。俺はポップコーンの味に気が付かないくらいには、調子が狂ってしまったのかもしれない。
    休暇明けのメンテナンスで、身体の中からくしゃくしゃになったポップコーンが出てくると思うと早くも憂鬱だ。
    まだ休暇は始まったばかりだというのに。

     
     
     
     
     
     

    PAZ & SAITO


     るところを人に見られるのはあまり好きではない。
    そもそも好きなやつがいるのだろうか? 少なくとも俺は、人前で寝るどころか誰かと一緒に寝るのはごめんだ。女と同じ朝を迎えることが嫌いだった俺は、彼女たちが寝息を立て始める頃にベッドから抜け出し、手頃なセーフハウスに逃げるように帰っていた。

    「おい、パズ。室内は禁煙だって言っただろ。」

    煙草に火を点けると、ベッドに横たわっていたサイトーが嫌そうな顔をしながら俺を睨む。

    「お前も吸えば問題ない。」

    俺はわざとらしくにやりと微笑みながら、くつろいでいるサイトーの膝にどっしりと頭を下ろし、新しい煙草を一本彼に差し出す。サイトーはため息をつきながら、流されるようにその煙草を咥えた。

    「お前、ひとん家で寝るの好きだよな。たまには帰れよ。」

    その言葉を聞いて自分の変わりように思わず笑いがこぼれそうになる。いつの間にか当たり前のようにこの家に入り浸るようになり、早一か月が経とうとしている。ベッド脇に並べられたふたつの枕を視線の隅で眺めながら、明日も堂々とここで朝を迎えているであろう自分の姿を鮮明に思い描く。

    「何ニヤニヤしてんだよ。」

    「いや、明日から休暇だと思うと楽しみでな。」

    あんたと過ごせる休暇だから、なんて言ったらどんな顔をするのだろうか。

     
     
     
     
     
     

    SAITO & TOGUSA

     べ物のことに関してだったら、俺は誰よりもサイトーのことを知っているかもしれない。
    今日は珍しく俺とサイトーの非番が被ったので、これまた本当に珍しく一緒に出掛けることになったのだ。何をするために家族サービスを返上してまでこんな人相の悪い男とふたりで出かけるのかというと、「食」のため。それ以外の何があろうか。

    義体化集団の9課では基本的に義体用の食品が優先されているため、俺とサイトーはよくお互いの腹の具合を気にして、時々差し入れなんかをいれたりしている。
    コンビニの新商品やフードカーの変遷なんかを熟知している隊員は俺らぐらいだろう。いつもはおにぎりやサンドイッチ、菓子パン、時間があるときは丼屋なんかに行ったりして、それなりに充実した食事ライフを送っている。

    そして今日は休暇である。いつも食べているようなものじゃなくて、もっといいものをパァーっと食べようじゃないか!という話になったのであった。

    「しかしなぁ、サイトー、本当に似合わない。」

    俺は思わず笑いがこぼれてしまう。なんと目の前の置かれているのは特盛特大の色鮮やかなフルーツパフェ。巷でちょっと話題になっていた代物だ。甘いものは嫌いじゃないというから、一人じゃ絶対に食べきれないこのパフェを完食しにやってきたのだ。

    「お前は、意外と似合ってるぞ。」

    「ちょっと、この絵面おもしろいから写真撮るね。」

    9課の奴らに送っとくよ、と言うと、サイトーは本当に呆れたと言わんばかりの顔をして、はぁと深いため息をついた。
    たまにはこんな休暇も悪くない。