一目見れば誰でもわかるだろう。それは義体であると。
どこで判断しているかと言えば、俺は、目だ。
アンドロイドや義体の目は、人間のそれより無機質で冷たい。ましてやトグサの形をしているのであれば尚更だろう。
その義体は、あくまで普段使い用ではないため、精巧に作る必要はなかった。
任務にだけ使えれば良い。女性の形をしていて、最低限の任務をこなせるだけの機能が備わり、後はその義体の主のゴーストさえあればうまく機能してくれる。
ほぼ全身を義体化したトグサは、時々義体を乗り換えて任務につくこともあった。
通常の姿では難しい潜入捜査や、女性の方が都合の良い場合、彼は構わず義体を乗り換える。以前では考えられない芸当だ。隠密としての役回りが多かった俺も、そのトグサの仕事っぷりには感嘆することがある。別に女性型の義体だからといって、もとの肉体に似せる必要は決してないのだが、どんなデザインにしていいか分からなかったトグサは、自分が生身であった時の姿を模した女性型義体を作った。
出来上がった義体に入ったトグサは、「ちょっと気持ち悪い」と苦笑していたが、あくまで自分自身の一部なんだという実感が持てるから良いと語っていた。
しかし、俺からしてみるとそれはあまりにも扇情的なものでしかなかった。おそらく、そう感じた者は、この9課に何人かいるかもしれない。
明るい栗色の髪に、大きくて丸いブラウンの瞳、肉付きの良い四肢に、柔らかな乳房。
それなのに、中身は9課の隊長トグサである。
どんな邪な思いがあろうとも、平の9課隊員がトグサに触れることは叶わない。
しかし、トグサの側近として常に共にいる今の俺には、それがで許されるかもしれないという事実が、非常に心地よく、魅惑的なのだ。男性としてのトグサに、特別な思いはないと思ってきたが、その義体を見た時、俺の中に予想外の衝撃が走った。そして、その義体にの中に、他者のゴーストではなく、”トグサ”のゴーストがいるということに興奮を覚えるのだった。
俺は衝動を胸に抑えたまま、トグサとの潜入捜査を無事終えた。
犯人を取り押さえ、証拠品も揃えることができたが、トグサは頬に切り傷を負い、若干義体を損傷してしまった。
傷口からは鮮やかな赤い液体が流れており、義体にしては不必要な機能だと思った。俺は、柔らかな肌を伝う鮮やかな赤を、恍惚とした気分とともに見つめていた。
トグサは、そんな俺に対し、無機質な瞳を揺らし続けていた。
その様子は俺に対して怯えているようにも感じた。その目は、俺を見つめて離さなかった。
「トグサどうした?」
「パズ・・・お前、何考えている?」
「何って?」
トグサは全身を強ばらせている。非常に警戒心の溢れる様子で身を構えていた。
どうやら、俺の邪な思いを感じ取ったようだ。一体今の俺はどんな顔をしているのだろうか?
「今、俺は、お前を抱きたくて仕方ない、そう思っている」
「俺は、俺だぞ。これは義体だ」
「知っている。でも俺はお前だから抱きたいのかもしれない。お前が乗った、お前の義体を」
「なぁ、パズ、俺、そういうのは・・・」
もうバレてしまったのなら仕方ない。俺は戸惑うトグサに一気に歩み寄り、握られたマテバを取り上げた。そしてそのままトグサの身体を床に押し倒し、両腕を拘束した。
「パズ!やめろ・・・・!」
口調はいつものトグサのままだが、普段のトグサの声より幾分高い音色が響く。身体にぴったりの制服が、トグサの肉体を程よく締め付け非常に色っぽい。
俺は、制止を求めて叫ぶトグサの唇を奪い、強く吸い上げた。それは柔らかく、非常に温かだった。
「パズ、俺は、男だぞ…!女じゃない!俺は俺だ!」
「ああ、知っている。お前はトグサだ。それでも、俺はあんたを抱きたいんだ」
トグサは目を見開いて、俺を見つめた。驚きと混乱で義体の表情が硬直している。
トグサの不慣れな義体操作が、義体特有のズレを生む。豊かで柔らかなトグサの表情とは違う無機質な表情が愛おしくてたまらない。俺は再びトグサの頬や唇、額にキスを降らせた。
「分かってないだろゼッタイ!だめだって!」
「じゃあ、なんだ。この義体じゃなく、いつものお前なら抱いていいのか?」
「だ、抱けるのかよ!」
「ああ、問題ない。これを抱いた後、お前自身も抱いてやる」
「な・・・・!」
顔を真っ赤にさせて、若干涙目にすらなってきた瞳をまっすぐ見つめながら、俺はトグサの太ももにゆったりと指を這わせる。
そしてそのまま優しく、柔らかな乳房へと移動し、最後、頬へと指を這わせた。流れるように触れると、トグサは動きに合わせてぎこちなく肌を震わせる。俺はトグサの瞳を捕らえたまま、頬を伝う赤の液体に指を這わせ、わざと舌を見せるようにして舐めとる。トグサは、俺の動きの一部始終を息を飲むように見つめているのが分かった。その素直な反応に満足した俺は、トグサの耳元に唇を寄せてそっと囁いた。
「今夜、”そのまま” 俺のセーフハウスに来い。絶対にだ」
拘束していた腕を解放してやり、俺はすぐにトグサから身体を離した。
トグサは上気した肌を揺らしながら、何が起こったのか分からない様子で呆然としている。
「ほら、いつまで座ってる。帰るぞ」
「え、あ、うん・・・」
ぎこちない様子で腰をあげるトグサの様子を眺めながら、俺は胸の高鳴りを感じていた。乱れた服を直しながら、トグサは目を合わせようとしない。トグサからさっきまでにはない緊張感と、女性の色気を思わせる夜の匂いがした。
今夜、トグサは必ず来る。
俺のゴーストはそう囁いていた。
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最後まで書いちゃう?って思ったけど理性が働きました笑
トグサ女体化リクで、コスプレ。パズトグ。パズさんの口説き方は肉体派の強引系。
女体トグサから本格的にトグサに入れ込み始めるパズさんは良質な変態。獣顔なパズさんを拝みたいこの頃です。