朝、目が覚めると、あなたはいつもいない。
僕は朝の生温い匂いが大嫌いだから、まず部屋の角にある窓を一つ開放する。
それから、パジャマのままあなたの姿を探しに行く。
僕は早起きが苦手だから、あなたの生活に合わせることはできないけど、
朝にしか見れないあなたの姿を見る為に、一応電脳を叩き起こすんだ。
何も無い、美しいリビングの片隅で、あなたはとても似合わない眼鏡をかけながら、
静かに新聞を広げている。
温かいコーヒーに、バターがたっぷり入ったトースト。
そろそろ歳なんだから、バターは控えてはどうかと言っても、
あなたは聞く耳を持たない。
出勤前のひととき。
僕はこの時間が一番好きだから、どんなに読みたい本があっても
どんなに見たい映画があっても、あなたと同じ時間に眠ることに決めたんだ。
「アオイ。寝巻きで歩くなといつも言ってるじゃないか。」
あなたはどんな時でも、僕をしっかり見つめて、少し怒ったように言う。
「寝巻きじゃないです。パジャマです。」
僕はあなたに怒られたくて、”寝巻き”でふらふらしてるんですなんて言ったら
どんな顔をするのかな。