それはまるで真夏の夢のように

 
 

 恋人と一泊二日の外泊。恋人と初めてのホテル。恋人と夏のビーチでデート――――――

 字面だけで思わずニヤニヤしてしまうような、そんな夏のイベントを実現するために、俺たちは車を出して遠路はるばる宮城県の海辺エリアにやってきた。そして、予約していたホテルにチェックインを済ますと、さっそく近くの海へと意気揚々に繰り出したのだった。宮城の海は東京の海とは違って本当に人が少ない。南の島の青い海!という感じではないが、海水は確実に澄んでいるようだ。水の温度もいくらかひんやりしている気がする。

「げ、冷てぇ…… え?冷たくね?」

「海って冷たいものじゃないの?」

「そ、そうか? そうだったか……?」

 確かに海に入るときは大体冷たかった気がしないでもない。でも沖縄とかその辺りの海はこんなに冷たくないだろう、たぶん。
 外の空気は30度を超えており、なかなかの暑さだったので、そのまま飛び込んでしまおうと思っていたのに、バシャバシャと膝のあたりまで浸かった段階で思わず立ちすくんでしまった。

「あー、さみぃ。なんだよ、東北の海ってのはこんなに寒いのか」

「ひゃあ、冷たいねぇ! どうしよ? 一気に入っちゃう? いくよ? いっちゃうよ?」

 テンション高めの優一が押し寄せる波に向かって腰をかがめている。そして中腰の状態で少しずつタイミングを見計らいながら海に飛びこもうとじりじりと身構えていた。これはもう、後ろから突き飛ばしてくれと言わんばかりの姿だ。俺はそれならと、海と真剣に向きあっている優一を無遠慮に後ろから掴み、その身体を宙高く持ち上げた。

「え、え!わ!亮!だめ!そういうのだめぇええ!」

 意外とひょいっと持ち上がったので、俺はそのまま数歩、大股で沖の方に向かって歩いてから、打ち寄せる波に向かって大ジャンプする。

「………っ!!!! ああああああーーーーーー!」

 優一の悲鳴が響くと同時、ザッパーーーーンっとひと際大きな波が海面に飛び散る。俺は優一の身体を抱きしめたまま、波の渦にぐるぐるに巻き込まれていた。自由の利かない海の中。立ち上がろうにも上も下も分からず、ただただ強い力に吸い寄せられてしまう。ただ確かなのはしっかりと抱きしめた優一の身体がここにあるということだけだ。海の波にぐるぐるとかき回された後、俺らはそんな波打ち際の世界からなんとか這い上がる。そこには青くて青くて、途方もなく青く澄み切った空が燦燦と輝いていた。

「わぁ、亮!!! びっくりするじゃん!! もうっ!!」

 仰いだ空を遮るように顔を真っ赤にして眉をひそめる優一の顔が飛び込んでくる。彼は髪まで濡れて全身びしょびしょだった。

「でも、もう冷たくないだろ?」

 俺は優一の腕を掴みながら身体を起こす。荒波に飲まれたような心地だったけれど、気が付けばそこは腰にも満たないほどの浅瀬だったようだ。

「今はそんなに寒くないけど……でも、飛び込むならちゃんと言ってよ!ちょっと鼻に入っちゃったじゃん……」

 ご機嫌斜めな様子の優一を見やると、確かにちょっとだけ鼻が赤くなっている気がする。俺はそんな優一のちょっぴり情けない姿をかわいいなぁと思いつつ眺めながら、そのまま背泳ぎで沖の方へぱしゃぱしゃぱしゃと泳いだ。すると、そんな俺に対してだいぶ不満げな表情を浮かべて、優一が睨んできた。

「な、なんだよ。なんか文句あんのか?」

 俺はそんな様子の優一に口を尖らせながら抗議する。すると、優一が突然勢いよく海の中へダイブし、軽やかなクロールでこちらに向かって泳いできた。
 あ、コレハヤバイ、殺される。俺はそう思った。俺は背泳ぎなんていう無防備な体勢をやめ、しっかりと臨戦体勢で構える。正面からなかなかの勢いで迫りくる優一の姿を目視して、俺は次に来るであろう攻撃に対して色々なパターンをシュミレートした。そのまま突っ込んでくるか、それとも潜水して水中から来るか、それとも……
 俺は容赦なく迫りくる優一と対峙する。まるでThe Worldのバトルような興奮を覚えた。よし、そろそろ自分の攻撃範囲へ到達する。俺は次の攻撃がいかようなものであろうと対応できるように神経を研ぎ澄ませる。するとそのまま優一がまっすぐ俺の懐に向かって突っ込んできた。やはりそのまま突っ込んできたか!俺はすかさず迫りくる優一の頭に向かって腕を伸ばし、彼のタックル技を防ごうとする。しかし、優一の頭に触れた瞬間、まるでその時を待っていたかのように、彼は頭をぐんと潜らせて海中へ全身を滑りこませた。

「な、なに!!?」

 そして次の瞬間、足、そして胴体が何かにまとわりつかれる感触に襲われ、そのままぐんっと海中にひきずりこまれた。

「……!!!?」

 一瞬にして頭の先まで海に沈み、全身を絡めとられて身動きができない。これは死ぬかもしれないと本気で恐怖を感じた。しかし次の瞬間には、海面に勢いよく突き上げられ海の外へ放り出される。

「…っ!はぁ…!!!」

「どうだー!!!」

 優一の満足げな声が鼓膜を揺さぶる。一瞬の出来事に何が起きたのか分からなかったが、眼前に広がる優一の満足げな顔を見て、なんとなく全てを悟った。

「次ああいうことしたら、ずるっと海にひきずりこんじゃうよー!」

「……っはぁ、はぁ、ったく、何しやがるんだ……!」

 俺は優一の身体にしがみつきながら息を整える。ちょっと海水が鼻に入ったかもしれない。

「ふふ、仕返しだよ」

 太陽が優一の肌をきらきらと照らしている。その満面の笑顔とセットで羨ましいくらい開放的な様子の恋人に、俺は全てがどうでもよくなってくる。足がつくかつかないかの深さで、俺たちはふたり、ふわふわと海面に浮いた。

「浮き輪置いてきちゃった……」

「あんだけ泳げるなら、浮き輪いらねぇだろ?」

「うーん、まぁそうなんだけど、ゆっくりしたいじゃん」

 優一がふわふわと水面を掻きながら浮いている。俺はそんな彼の肩にそっと捕まった。

「俺を運べ」

「えー、何それ。もう……」

 ふわりふわりと泳ぐ優一の背中にぴったりと肌を寄り添わせる。いつもだったら身体が重くて背中になんて乗れないけれど海の中なら何でもできそうだ。

「わわ、ちょっと! くすぐったいんだけど!」

 俺はせっかくの機会と言わんばかりに、優一の背中に足を絡ませ、首筋に腕を回し、おんぶのような恰好で優一に抱き着いた。こんなにくっついても、海の浮力が俺の体重を感じさせない。むしろしっかり掴まないとふわふわと身体が離れてしまうくらいだ。
 ぎゅうっと力一杯抱きしめると、さらさらと触れる水の心地と肌の滑らかさが混ざり合い、とても気持ちがいい。

「もう……しょうがないなぁ。とりあえず浮き輪取りに行くから。それまでね」

「へーい、へい」

 優一が進むたびに俺の腕と彼の背中の隙間で、ちゃぷちゃぷと小さく波が立つ。
海水越しに見る彼の素肌は、透き通るほど白くてとても綺麗だった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
2.
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 海の塩ですっかりべたべたになってしまった俺たちは、海を出たらすぐに自分たちのホテルへ戻った。浜辺から帰ってくるだけのほんの数十分の間に、海の温度でだいぶ冷たくなっていた身体も日差しですっかり熱くなり、汗と海の塩でぐちゃぐちゃだった。

「亮、先にシャワー使っていいよ」

 部屋に着くなり、優一は荷物を片付けながらそう促す。

「なーに言ってんだよ、こんなベタベタでお前どうするつもりなんだよ、さっさと入るぞ」

「……わ!………え、ええ……でも、狭いし………」

 遠慮気味の優一を無視して腕を引っ張りながら無理矢理シャワールームに連れて行く。いわゆるユニットバス式のシャワー室は確かにお世辞にも広いとは言えない。俺らは水着のままバスタブに入り適当に蛇口をひねってシャワーを出した。優一はシャワーの下で肩をすくめておとなしくしていた。彼の細い首筋から肩のライン、そして腰の方へと流れるしなやかな曲線を水滴が滑り落ちていく。俺はそんな様子を思わずうっとりと眺めてしまう。無防備な背中はシャワーの熱を心地よく感じている証拠だろうか。
 俺は一通りシャワーで優一を流した後、今度は自分の身体を流していく。夏の日差しに焼けた肌がシャワーの熱で少しぴりぴりと痛む。素肌にこびりついた砂がさらさらと排水溝に流されていくのを見届けていると、ふと、海パンとお腹の隙間にたっぷりとまだ砂が残っていることに気が付いた。俺はパンツの紐を緩めて下半身にもシャワーをかけて汚れを落としていく。

「優一も、これ脱がないと……」

「わっ、ちょっと!」

 俺は彼の砂だらけの海パンを後ろからずるりとひっぱる。ベルトなどで留まっていないパンツはあっけなく下にさがり、足もとにぺしゃりと落ちた。
つるりと現れた優一のおしりには白い砂がまだあちこちにへばりついている。

「ほら、まだ砂ついてる」

「も、もう!分かってるよ!」

 相変わらず背を向けたまま声を荒げている。少しだけ耳が赤くなっているから、きっと今頃顔も真っ赤なんだろうな。そんなことを考えながら、俺も自分の海パンをさっさと脱ぎ捨てる。優一から借りた真っ赤な海パンからはじゃりじゃりと砂の感触がした。
 お互いに何も身に着けていない状態で、ひとつのシャワーを共有しているという状況はそういえば初めてかもしれない。確かに温泉や優一の家のお風呂には一緒に入っていたが、もっと広かったし、それぞれの洗面台があったではないか。
 俺は全裸の状態で頼りなさげに背を向ける優一の様子がなんだかとても色っぽく思えてきて、思わず目の前の首筋にぺろりと舌を這わせた。

「……っわ…………っ!」

「うぇ、しょっぱい……!」

 想像以上にしょっぱい肌。まるで塩漬けのようだ。お湯だけでは海の塩は完全には落ちないようだ。でもそんな塩気たっぷりの肌はなんだかちょっと美味しそうだなと思いながら首筋を見つめていると、優一がじろりと俺の方を振り返る。

「…………シャワー浴びるだけだからね…」

「……も、もちろん!」

 この状況でそんなわけあるかよ、と心の中で悪態をつきながら俺は一応誠意ありげな返事をしておく。
全身がしっとりと濡れたところっでいったんシャワーを止め、浴室に設置されていたボディーソープに手を伸ばす。ちょっと小洒落たボトルのそれからソープを適当にとり、同様に浴室にあったハンドタオルにそれをつけて泡立てていく。本当は優一の身体を洗いたい衝動に駆られたが、なんだか警戒気味のオーラを感じ、ひとまず自分の身体をさっと洗った。

「これ、使う?」

「う、うん。ありがとう」

 優一に泡立ったタオルを渡し、彼が洗い終わるを待つ。相変わらず背を向けられてしまっているけれど、晒された優一の裸が浴室のライトの下だとはっきりと照らされていつも以上に隅々まで見えてしまう。生っぽく感じてしまうその素肌を思わずじっと見つめてしまう。

「亮、見すぎだよ……」

「だって……」

 さすがに俺の視線が気になった優一が俺の方をちらりと振り返る。少し頬を赤らめながら俺のことを突き放すように睨む瞳は、俺のことをけん制するどころかむしろ誘っているようにすら思えてきてしまう。俺はそんな様子が堪らなくて思わず後ろからぎゅうっと泡だらけの身体に抱き着いてしまった。いきなりの行動に対応が遅れた優一はあっけなく俺の腕の中にすっぽりと収まり、「ひゃあ!」と情けない声を漏らした。

「こら!亮、何してるの!離れてよ!」

 懸命に俺の腕から逃れようと身じろぐが、泡立ったソープがにゅるっにゅるっとお互いの肌の間を滑らかに流れるばかりで、まったく抵抗しきれていない。ボディーソープがまるで潤滑油のようにお互いの肌の間をぬるぬると滑る。

「…っ………」

 その感触は今までに味わったことのないもので、とても気持ちが良い。おもわず抱きしめていた身体に自分の身体を絡ませ肌をぬるぬるとこすり合わせてしまう。つるつる、ぬるぬると肌が触れ合い、否応なしに全身が性感帯のように熱く反応してしまう。

「…あ、ん……んっ……」

「優一、気持ちいいの?」

「……っ、ちが……」

 後ろから優一を抱きかかえたまま、胸やお腹や腰のあたりにかけて縦横無尽に指先を這わせる。そのたびに優一の身体がぴくん、ぴくんと敏感に震え、噛みしめた唇から言葉にならない甘い声をぽろぽろと溢し出す。

「優一、何考えてる?」

「な、んで……」

「すげぇエロいこと考えてるだろ?」

「……っ………そんなこと………」

「でも、ここ勃ってる」

「……っ……ぁ………」

 俺は後ろから優一の性器をきゅっと握りこむ。
案の定、既に硬くなり出していたそこは、俺の指先に包まれてさらに一回り大きくなった気がする。

「ほら」

「ちがう…っ……そっ、れは、亮がいっぱい触るから……」

 俺はボディソープを指に絡めて、そのまま優一の性器をぬるぬると少ししごいてみる。まるでローションを塗ったかのように滑らかに擦れるからか、あっという間にそこは大きく立ち上がり、先端からソープでも水でもないとろりとしたものが早くもこぼれだしてくる。

「あれ?何これ…?」

「……っ…」

 俺は先端に先走ったそれを指先ですくい、わざとらしく優一の前でねばねばと見せつけてみる。後ろからだとちゃんと表情を確認できないのが残念だけど、おそらくもうトマトみたいに真っ赤になってるに違いない。

「ね、優一。ボディーソープって染みると思う?」

「……? 何に?」

「ここに」

 俺はすっかり硬く仕上がってしまった自分の性器を優一の臀部にあてがう。泡立ったソープを割れ目に添わせて少しずつ馴染ませていく。

「…っ…あ、だめ、だよ……」

「だめって、もう、少し入ってる」

 そう言いながら先端を少しだけ入口に咥えさせる。まだ全然ほぐせていない窄まりは、軽く咥えただけで全く中に入れてくれない。それでもゆっくり腰を回しながら入口を徐々に開いていく。

「やだ、や……ここ、やだ。せめてベッド行こうよ……」

 確かに、今ならシャワーでさっと泡を流して部屋に戻れば続きもすんなりできそうだ。だがしかし、全身をぬるぬると光らせながら腰を突き出している優一を目の前にしてそれを手放せるやつがいるだろうか?

「んー、それもいいけど、ここで一回してから…………」

「……っ……そ、そんな…… っ、あ………!!」

 ぐっと力を込めて腰で突くとと、ぷつん、と先端が優一の入り口に入りこむ感触。そういえば、初めて優一を後ろから、しかも立った状態で挿入した気がする。なんとなくあの畳の部屋でそんな激しい行為ができる雰囲気ではなかったから、いつも彼を横たわらせて抱いていたけれど、彼の後ろ姿がこんなにも魅惑的ならもっと早く試していればよかった。
 浴室の壁に手をついてもらい、俺は優一の腰をしっかりと掴んで固定する。ソープを絡めた自分の性器をゆっくりと彼のおしりの割れ目に沈みこませていく。ふっくらと丸い柔らかな曲線とその細い腰に掛けてのしなやかなラインがはっきりと強調されるその格好は、とても色っぽくて堪らない。

「………は、あ………優一……えっろ………」

「…や、……あ…待って……っ」

 全然ほぐしていなかったけれど、ソープが良いあんばいに潤滑油となり、腰をぐりぐりと回しながら進めていくと意外とにゅるりにゅるりと中へおさまっていく。かわいらしい割れ目の間でそっと慎ましげに隠されていた秘部がしっかりと俺の欲望を咥えて淫らに震えている。

「…う、っ………は、あ………っ………」

 少し苦しそうな声を漏らす優一を少しでも気持ちよくしてあげたくて、勃ちあがり始めていた彼の性器を再び愛撫する。にゅるんと滑るそこを優しく、でも確実に力を込めてしごきあげながら、もう片方の指先で彼の乳首や首筋を愛撫したり、背中や腰のラインをじっくりと撫で上げていく。

「……っ……ん、ぁ……や、だぁ……」

「嫌じゃないだろ、こんなになってるくせに」

「…あ、……っ、あっ……や、まっ……」

 おしりを突き出しながらとろとろにとろけていく優一の様子に、支配欲のような、雄々しい感情がむくむくと湧き上がってくる。
 もっとぐちゃぐちゃに乱したい。何も考えられないくらい、俺のことしか考えられないくらいにめちゃくちゃにしてしまいたい。俺は湧き起こる強い気持ちに耐えられなくなって彼の身体を後ろからぐっと抱き寄せ、背中にぴったりと身体を這わせた。そしてそのまま彼の身体を乱暴に後方にのけぞらせる。壁に手をついて支えていた彼の身体が、バランスを崩してぐらりと揺れたところで、後ろから羽交い絞めにし一気に腰を突き上げた。

「……っ!!……あっ…!……っ………!!」

 身体をのけぞらせながらひと際甘い声で喘ぎだす。俺はすかさずそのままリズムよく腰を動かすと、何度も甘い声で鳴きだした。後ろ側から突く場合にも彼の甘いスポットがあるようだ。足をかくかくと震わせながら甘く身体を震わせている様子をじっくりと味わう。

「……や、だぁ……っあ…ぁ、……りょう……りょう…っ…」

 何度も甘い声で名前を呼ばれるたびに、俺の中心でわななく欲望の渦がずんずんと攻め上がってくる。そろそろ自分も限界に近づいてきたので、前ですっかり解放を待ち望んでいる優一の中心にそっと指を這わせる。

「……っ、あ、だ、……で…ちゃう………っ……」

「ん、いいぜ……」

「…あ、あ…ぁ……っ……」

 何度か少し強めにしごきあげると、優一はあっけなく壁に精を放った。びくん、びくんと震える彼の欲望の反応を最後まで味わった後、俺は腰の動きを再開させる。

「……ん、ぅ…………ぁ………」

「…っ、俺も、いきそ……」

 ぴったりと身体を添わせ、彼の温度を全身でぎゅうと抱きしめる。その甘い心地をたっぷりと感じながら、優一の内側に心ゆくまで腰を打ち付け、俺はそのまま彼の中で精を解き放った。
 きゅうと締め付けられた優一の中に包まれて、欲望がじんわりと溶けていく心地が愛おしい。

「……ぁ……亮……また、中……っ……!」

 その言葉に、はっと我に返る。

「……う、あ……ご、めん」

 行為に夢中になってしまうと、ついついそのまま優一の中に出してしまう。ゴムを付けている時はそれでも構わないが、こうして衝動的に行為を始めた時はよくないということを先日指摘されたばかりだ。翌日「お腹が…痛い…」と項垂れている優一を見た時の罪悪感は尋常じゃなかった。

「本当にごめん……! 中の、出した方がいいよね」

「え、いや………っわ………っ…!」

 俺は自分自身を引き抜いた後に、まだ開いた状態の後穴に指をそっと差し込む。そこにはまだ放たれたばかりの生温かい精液の感触があり、俺はゆっくりとそれを掻き出していく。

「………っ……ぁ、そんな、待って……っ……」

「でも、出さないと、お腹壊すだろ………」

「ちが………そうじゃなくて……ぁ………」

「ごめん、痛い……?」

「…………っ………」

 中で指を動かすたびに優一がぴくぴくと震えているから、もしかしたら痛いのかもしれないと思ったが、顔を真っ赤にした彼が呼吸の合間に漏らす甘い声を聞いて、たぶん中を触られてちょっと気持ちが良くなってしまったんだろうと気付いた。

「もしかして、優一、まだしたいの?」

「ち、ちが……」

「じゃあ次はベッドでしようか。俺もまだ、できそうだし………」

 内側でとろけているもの掻き出しながら、中の壁面を優しく撫でる。敏感にとろけたそこはもうすでに新たな刺激を求めているように物欲しげに見えた。

「……っ、亮の、ばか………」

 割れ目からとろりと白い欲望が流れ落ちる。
すっかり妖艶な様子に仕上がっている優一を眺めながら、俺はシャワーをゆっくりとひねった。
 外はまだ昼下がり。まだまだたっぷり楽しめそうだ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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