こちらは、2024年8月から10月に渡って書いてきた「奇妙なバリスタは波紋のキスの夢を見る」のあとがきになります。ネタバレを含みますので、読了された方推奨です。大丈夫な方はお進みください。
はい。なんとか完結しました波紋のキスの夢。
こちらの物語、一応「ジョジョと奇妙なバリスタの話」のIF続編なんですが、当初は続編に手を出すつもりではありませんでした。しかし夏の気配がする7月頃……突如ヨシュアが脳内に現れました。
「夏ですね。ニューヨークの夏って素敵ですよね……」
「そうだねぇ……って、ヨシュア!?」
「だからジョースターさんとの、夏の思い出が欲しいです。書いてください」
「え!は? おま……何言ってるか分かってる? 私は不倫は射程外なん……」
「ジョースターさんと海に行きたいです。お願いします」
「………」
「参考になるかなと思って、こんなイメージ画も用意してみました。どうですか? ダメでしょうか……ひと夏だけでいいんです……お願いします…」
「………」
座敷童のごとく脳内に現れたヨシュアに懇願され、私はついに筆を取ったのであった……
という感じでスタートした本作。こんな調子なので「海の綺麗な島で夏の思い出作りをする二人」を描くことが一番の主題でした。なのでこれといってあとがきもクソもないんですが……。それに今までのどの話よりわりと単純明快な気もしますし……。
でも、もしかしてそう思ってるのは 私だけかもしれない と、ふと思い直し……。一応簡単なあとがきを書いてみました。小説1話分くらいの文章量で読めます。お暇な時にでもどうぞ。
About
1959年8月。シーザーによく似た青年・ヨシュアとの出会いから約1年後のニューヨーク。あれから二人は一人の友人として新しい生活を送っていた。しかしヨシュアはジョセフとの間に、不思議な繋がり “波紋” の存在を感じ始める……。
―——— もうこの世界に、波紋戦士は必要ない。
いつかみんな波紋のことなんか忘れて、目の前に広がるあてどない膨大な時間の中を生きていく。
それでも波紋は変わらずここにある。いつまでも、永遠に、そこにあり続けるんだ
世界から消えゆく波紋使いと、波紋に惹かれる一人の青年の、ちょっと奇妙なひと夏の物語
目次 ブログの内容
・About
・登場した場所の小話
・登場人物の小話
・ヨシュアの波紋能力は次世代の象徴
・ジョセフの行動は矛盾しているのか
・エンドロール。イメージ曲とか
登場した場所の小話
ランドトゥーシー Land to Sea
ヨシュアが働くコーヒー屋。実在はしてませんが、なんとなく参考にしたのはDevociónとかBakeriなどでしょうか。Bakeriはその名の通りベーカリーなんですけどね。こんな雰囲気の、外には綺麗なテラス席のある、アットホームなカフェを想像していました。
Devoción: https://www.devocion.com/pages/cafes
Bakeri: https://www.bakeribrooklyn.com/williamsburg-lunch
ちなみに同じ名前のお店あるかなぁと調べてみたら、なんと!ブルックリンにありました!中国系みたいですけど可愛らしいです♪ 今度行ってみようと思います! https://landtoseanyc.com/
グランドセントラル・ターミナル Grand Central Terminal
知らない人はいないのではないかというくらい有名なターミナル。中央ドームの時計台広場が有名。エメラルドグリーンの天井には星座が描かれています。ヨシュアはここで初めてニューヨークに来た時の心持ちを思い出し、波紋と深く繋がるきっかけを得ることになります。
ポレペル島 Pollepel Island
Pollepel Island, Beacon, NY 12508
リサリサの暮らす島はこちらがモデルになっています。ハドソン川を北へ上がったコールドスプリング~ビーコンの間あたりに浮かぶ小島です。もともとフランシス・バナーマンという所有者がおり、城が建っていました。今では廃城となり観光地になっているようです。
ファイヤーアイランド(チェリーグローブ) Fire Island’s Cherry Grove
Cherry Grove, Fire Island NY
ヨシュアとジョセフが一週間過ごした島。ニューヨーク・ロングアイランドの南側に位置する細長い島です。鉄道と船で行く場所のため、観光客が少ないのがまた良いです。あまり混雑せずいつでものんびりと海を楽しめます。意外とニューヨークの海って綺麗なんですよ~
昔からゲイの聖地と呼ばれ、今でも避暑地として有名です。民泊に宿泊したら隣の部屋から激しい男の喘ぎ声がして目が覚める……なんてこともありました笑 それくらいゲイの多い島です。昔の様子なんかは結構アーカイブで残っていて、見ているだけで楽しいです。
◎チェリーグローブヒストリー: https://www.vogue.com/slideshow/fire-island-cherry-grove-exhibit-new-york-historical-society
登場人物の小話
登場回数は少ないけどみんなそれぞれ意外と設定はありました。今回はヨシュア寄り目線のため、ほとんどジョセフと心模様ばかりに視線が向いていましたので、ちょっとだけご紹介。
シェリー・キャンベル
23歳。167cm。カフェ「ランド・トゥー・シー」で働くバリスタで、ヨシュアの新しいガールフレンド。人当たりの良い性格をしており、バリスタとしての知識や経験も豊富。唯一ヨシュアと長い期間交際できている女性。エマ・ストーン似の赤髪&グリーンアイの美女。どちらかというと、世話を焼きたいタイプ。年齢のわりに落ち着いており、まだまだ頼りないヨシュアを弟のように可愛がっている。
マルクス・ポートランド
34歳。188cm。スコットランド出身のアメリカ人でゲイ。B級ジョセフ。ミッドタウンに住んでおり、パートナーを探すためにゲイの集まるグリニッチビレッジに入り浸っていた。ヨシュアからの評価はズタボロだが、少々お人好しで頼りないだけでそこまで悪いヤツではない。ジョセフに殴られた後、波紋で記憶を消されてしまい、ヨシュアのことは忘れてしまった。
トム・ハドソン
19歳。177cm。ヨシュアが働くカフェの後輩。トム・ホーランド似の青年でコロンビア大学の学生。育ちがよく、社会勉強のためにカフェでアルバイトを始めた。年齢の近いヨシュアとは気が合うようで、ヨシュアの数少ない友達の一人。
ヨシュア・オドネル
21歳。184cm。78kg→72kg。筋トレをサボって体重が落ちてしまった。バリスタとして働く大学生。20年前に死んだジョセフの親友・シーザーに似ていることから、ジョセフと交流することになる青年。性格はそれほどシーザーには似ていないようで、年のわりにまだ幼さの残る現代っ子。
2月の事件以来、ジョセフに確かな恋心を抱くようになる。しかし既婚者であるジョセフとの関係に悩み一時は離れようとするも、結局関係を深めていく。ジョセフから波紋の存在を打ち明けられたことで、ジョセフとの関係、そして自分自身の能力と向き合うことになる。夏の修行生活を乗り越えたヨシュアは一人前の波紋使いとなり、一人の人間として成長していく。
ジョセフ・ジョースター
38歳。195cm。ニューヨークで不動産業を営むイギリス人。妻と一人の娘がいる。20年前の世界の命運をかけた戦い(石仮面と柱の男の戦い)に身を投じ無事生還した。波紋使いだが現役は退いている。以前は気性の激しい性格をしていたが、現在は年相応に落ち着いてきた様子。
2月の出来事以来、心の葛藤を乗り越え社会的成功を掴み始めていた。しかしヨシュアは逆に自分の存在によって悩み、傷ついていることを知り、ヨシュアが持っている才能や可能性を引き出し、彼を幸せにすることを胸に誓う。夏の修行を通じてヨシュアと深く交流しながら、ヨシュアを一人前の波紋使いへ成長させる。
ヨシュアの波紋能力は次世代の象徴
(※以下はあくまでこの物語上の設定ですので原作とは異なる部分があります)
ヨシュアの波紋能力は、スタンド能力と波紋の間くらいのイメージで考えていました。何か姿形を与えれば、ほぼスタンドみたいなものかもしれません。
姿・形はあるが目には見えない力(パワー)
名付けて「スタンド」
それは いつでも どこの場所でも存在しているが
見ようとしない人が見ないだけである
────どこかの漫画家────
とも言われていますが、ヨシュアの波紋もわりとそういう感じでしょうか。世界の至るところ、生物たちの間に波紋は存在していて、それを感じて、調和させたり逆に乱したりもできる。波紋を使って人間同士の心の状態や関係、自然界にあるエネルギーを調和させたり、移動させたりする能力として描きました。この能力自体は、波紋使いなら誰でもある程度は出来る操作だけど、ヨシュアはそのスケールが格段に大きい、という感じです。
今までの波紋使いは柱の男と戦うための「戦士」として訓練され、波紋使い同士のルールなんかも、戦士スタイルのものが多かったんじゃないかなぁと想像しています。柱の男がいない世界では、長い間培われてきたルールも、力関係も何もかもが意味のないものとなっていく。時代の変化とはそういうものだと思います。もう何の意味ない「波紋使いの掟」のようなものを押し付け続ける界隈にジョセフは嫌気が差し、波紋使いと関わるのはリサリサのみとなっています。
しかしどんな時代になろうとも波紋自体は存在し続ける。そしてジョセフは誰よりも波紋との繋がりを大事にしていました。
もちろん、波紋使いの中にも素晴らしい人はいたと思いますが、多くの波紋使いが戦いの手段として波紋を考え、波紋を道具のように使っていました。しかし戦いの終わった次世代を生きるヨシュアは自然と「調和」や「癒し」を求めて波紋と触れ合うようになります。
戦士として生きて死んでいったシーザーの魂の片鱗を乗せた青年が、生き物たちの調和や癒しに強く特化した波紋使いとして成長していくという、運命のいたずらみたいなものがあったらいいな……と思い、こんな感じの設定にさせて頂きました。
ジョセフの行動は矛盾しているのか
「自分のせいでヨシュアを不幸にしたまま生きていくことはできない」と言いながら、いわゆる不倫関係を深めて行くジョセフの行動は矛盾しているようにも見えます。これが普通の女性相手なら突き放すのが正解だと思いますが、ヨシュアとの関係はそう単純なものではなかった。
ジョセフにとって一番苦しかったのは「自分だけが幸せになり、ヨシュアが不幸せになっていくこと」でした。前作でヨシュアに自分の苦しみを共有することで救われたのに、逆にヨシュアはその経験に苦しみ、癒す方法が見つからないでいる。だからこそ、ヨシュアの苦しみを癒すのは自分の役目で、自分がやらなければならないことだとジョセフは考えました。一歩間違うと、とんでもなくヤバイ沼しかない状況ですね…。
そしてもし、このままジョセフがヨシュアを選んでいたら……。おそらく二人とも後悔に苦しんでいたでしょう。ジョセフに置いていかれた家族の思いにヨシュアは絶対に耐えられませんし、ジョセフも家族の思いやヨシュアの後悔に耐えられず、あっけなく二人の関係は破綻する…。それが分かっているからこそ、ジョセフはこの不倫関係(ヨシュアを選ばず、家族との人生を選択すること。家族を守りながらヨシュアとの関係を深めること)を押し進めます。
二人にとって、この愛は傷のない、永遠になることを夢見て……。
だからこそいつか終わる。終わらせなくてはいけないとお互いが思っているからこそ、ヨシュアが求める愛に全力で答える。これ以上にないくらい愛を注ぐ。そして二人だけの秘密と思い出を作る。波紋という二人にしか分からない繋がりを完璧なくらい作り上げる。それがジョセフの目的でした。
忘れられない思い出があるから人は前を向ける。絶対に愛されていたという確信が孤独な人生を支える。全てを捧げた経験が、あるいは燃え尽きるような恋をしたというその思い出を糧に、人は生きていけるのかもしれない……
ジョセフは身をもってそれを知っていました。それが苦しみに変わることもあるけど、ヨシュアならきっと乗り越えていけると信じています。でもそれと同時に、ここにあるのは大人のエゴ、消えることのないシーザーへの思い、独占欲…… 人間くさいぐちゃぐちゃの感情です。しかしそれが、ジョセフが導き出したひとつの答えだったのだと私は思います。
エンドロール。イメージ曲とか
小説を書いている時は、結構無音というか環境音が多かったように思います。
実際ファイヤーアイランドを歩き回りながら、執筆した時間もありました。それ以外は色々な洋楽を聞いていたんですが、今回はJamie Millerさんがわりとしっくりきたかなぁ。声質にちょっとヨシュアみを見出しつつ、やはり彼の曲は歌詞が良いんですよね。Youtubeのページに歌詞が載ってるので、そちらと合わせてぜひお聞き頂ければと。良い曲が多いのでどの曲を選ぶのが非常に迷ったんですが、今回はこちらの2つをチョイスしました。
Jamie Miller – Long Way Home
これはまさにヨシュアやな……と、すぐ好きになった曲です。ヨシュアには悲しい曲は似合わないですからね。
Take the long way, Make it last forever! I wanna take, The long way home!
(遠回りして、永遠に続くように!私は遠回りして帰りたい!)
Jamie Miller – Best Seat In The House
映画のエンドロールに流れそうな趣もいいですが、歌詞がいいですね…。ジョセフver.という感じです
Somehow, You’re not around. But you got the best seat in the house…
(どうしてか、君はここにいない。でも君は、劇場で一番いい席に座っているんだ)
ヨシュアの懇願から始まり、なんとか無事に書き終えましたがいかがでしたでしょうか。書いてて非常に楽しかったんですが、やはり取り扱いが難しい題材なので、結構悩みましたね。何もかも全部ヨシュアのせいなので何か不満があればどうぞヨシュアにぶつけてください、お願いします笑
そして次回は何を書こうか。ニューヨーク舞台の話しか書いていないので、そろそろ原作軸か、ニューヨーク以外のお話を書いてみたい気もします。気が済むまでまだまだ何か創作していると思いますので、機会があればまた読んで頂けたら嬉しいです。それでは…