バリスタの話 あとがき/あらすじと裏話

 
 
 

おおよそ10話で連載してきた「小説 ジョジョと奇妙なバリスタの話」の補足話的なページです。時代背景や舞台、各話のコーヒー紹介、物語の裏話なんかをまとめました。本編も約10万字の長編になってしまいましたので、各話の簡単なあらすじも書いてみました。本文を読んだ人も、読んでない人も、それなりに何か分かるようにまとめたつもりです、たぶん…。結構長いのでお暇な時推奨。目次から気になるところだけお読み頂く位が調度良いかもしれません。

※イラスト・内容の一部にリバ表現(ややJC寄り)がございますので苦手な方はご注意ください

 
 
 
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目次
About
あらすじ
各話コーヒーの紹介
登場した場所の小話
ヨシュア・オドネルとは何だったのか
色面の絵画/ジョセフの罪とは何だったのか
「ジョジョ」という愛称
腕時計の意味
ヨシュア萌え発動中。IFとかその後の物語
総括・イメージ曲とか
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About
 1958年。石仮面をめぐる戦いから20年後のニューヨーク。ジョセフは雑踏の中で偶然シーザーに似た青年を見つける。彼の名はヨシュア。バリスタをしている大学生で、ジョセフは毎朝ヨシュアが働くカフェに通うようになる。ヨシュアは一体何者なのか。「20年前に死んだ友人」を彼の中に探すジョセフと、そんな風変りな客に夢中になっていくヨシュアとの、ちょっと奇妙な物語。

ジョセフ・ジョースター
38歳。ニューヨークで不動産業を営むイギリス人。妻と一人の娘がいる。20年前の世界の命運をかけた戦い(石仮面と柱の男の戦い)に身を投じ無事生還した。波紋使いだが現役は退いている。以前は気性の激しい性格をしていたが、現在は年相応に落ち着いてきた様子

ヨシュア・オドネル
20歳。バリスタとして働く大学生。20年前に死んだジョセフの親友・シーザーに似ていることから、ジョセフと交流することになる青年。性格はそれほどシーザーには似ていないようで、年のわりにまだ幼さの残る現代っ子。

 
 
 

あらすじ

プロローグ
 1958年10月、ニューヨーク・マンハッタン。ジョセフは仕事帰りのアッパーイーストサイドの交差点でシーザーによく似た青年とすれ違う。この日を境にジョセフの生活に少しずつ変化が起こり始める。

1話 Long Black
 数日後、会社近くに新しくオープンしたカフェ・ニューエイジに立ち寄ると、先日すれ違ったシーザーによく似た青年と再会する。彼の名前はヨシュア。このカフェでバリスタをしている大学生だった。ジョセフはまるでシーザーと再会したような気持ちで、彼に自分の名刺を渡す。この日からジョセフの頭の中はヨシュアでいっぱいになっていく。

2話 Caffè mocha
 ヨシュアに名刺を渡したものの、彼から特に連絡が来ることはなく週末を迎えた。ジョセフは落ち着かない気持ちを抱えて、休日のカフェ・ニューエイジへ向かう。ヨシュアと数日ぶりの再会を喜びつつ、他愛のない会話を楽しむジョセフ。二人は互いに新しい友人の気配を感じ始めていた。

3話 Con Panna “Style”
 11月。毎朝ニューエイジでコーヒーを注文するようになったジョセフは、一人の顧客として、友人として、ヨシュアと朝のひと時を過ごすようになっていた。そんなある日のこと。ヨシュアが週末にメトロポリタン美術館へ行かないかと誘う。二人は開催されていたマーク・ロスコ展へ行き、この時ジョセフは絵画を通じて自分の心の奥に仕舞い込んでいたシーザーへの想い・記憶と向き合うことになる。その後、その絵画はことあるごとにジョセフの前に現れては、ジョセフの心の深淵を覗かせようとする。

4話(前・後) Affogato
 クリスマスの雰囲気に彩られた12月。ジョセフは娘ホリィのクリスマスプレゼントを買いにヨシュアを誘う。思春期になったホリィの好みが分からずプレゼントが不評続きだったジョセフは、ヨシュアに助言を貰い、無事プレゼントを購入する。その帰り道、二人は時計店に立ち寄り、ジョセフはヨシュアに腕時計をプレゼントする。ロックフェラーセンターのクリスマスツリーの前でプレゼントを渡すジョセフ。ニューヨークでシーザーと過ごすことを夢見ていたジョセフは、ヨシュアとの出会いがサンタからの贈り物のように思えるのだった。

5話 Americano
 1959年1月。ヨシュア視点。休暇を終え、年明け早々からカフェで仕事をするヨシュアの下にジョセフが現れる。久しぶりの再会を喜ぶのも束の間、ジョセフの親友スモーキーが登場。ヨシュアは二人の旧知の仲に驚きつつも少し嫉妬してしまう。そして未だに「ジョジョ」という愛称で呼ばせてもらっていないことに距離感を感じてしまう。そんな心寂しい状態で一日の仕事を終えたヨシュア。するとそこに再びジョセフが現れる。ジョセフは酔っており、コーヒーを注文するもののカフェで眠ってしまう。ヨシュアが遊び心で「ジョジョ」と愛称で呼びかけると、ジョセフはヨシュアをシーザーと勘違いしてしまう。この時のジョセフの様子を見てヨシュアは、ジョセフとシーザーの本当の関係について確信する。それと同時に、自分の胸の内に恋にも似た熱い気持ちが芽生えていることに気がつくのだった。

6話(前・後) Caffè Latte
 ヨシュアにシーザーを重ねてしまうことに思い悩み始めていたジョセフは、親友のスモーキーに相談をする。しかしジョセフは「シーザーとの本当の関係」を打ち明けることができず、また一人で悩みを抱えこむことになる。ジョセフはしばらくニューエイジに行くのを避けていたが、早々にヨシュアから電話が鳴り、再び会う約束をしてしまう。
 2月上旬。ふたりはグリニッチビレッジのライブハウスを訪れる。まるでデートでもしているかのように、ストリートフードを楽しみ、音楽を満喫したふたり。しかしそんな二人の前に一人の男が現れ、二人の関係を揶揄してジョセフの逆鱗に触れる。ジョセフはやり場のない怒りと悲しみに打ちひしがれるも、ヨシュアの存在によって救われる。そのままヨシュアの家に行きシーザーとの思い出を語るジョセフ。二人は煙草を吸いながらお互いの心に芽生えた想いに気がつく。そしてヨシュアの呼吸の中に、シーザーの波紋を感じるのだった。

7話 Empty cup
 シーザーへの想いやヨシュアへの感情が膨らみ過ぎたジョセフは、一人、絵画と向きあっていた。そんな中、妻スージーと「もしシーザーが生きていたら」と語り合う。スージーとの会話、家族との思い出を通じてジョセフは自分が大切にするべきなのは「家族との未来」だと胸に刻み、ヨシュアと距離を置くことを決意する。しかしそう思いながらも、なかなかヨシュアを突き放すことができないまま時間は過ぎていった。
 2月26日。ジョセフはついにヨシュアに決別の言葉を述べる。ヨシュアは怒り、悲しみ、ジョセフの前から走り去って行った。しかしこの時、ヨシュアの後ろ姿とシーザーの後ろ姿が重なる。明日はシーザーの命日だ。ジョセフはヨシュアの死を予感し、ヨシュアを探しに走り出す。

8話 Espresso
 街を探し周り、手がかりを掴んだジョセフはついにヨシュアを見つける。しかしヨシュアは冬のハドソン川に落ちて意識を失っていた。冷たくなったヨシュアを抱きしめ、何もかもに絶望するジョセフ。ジョセフの心はサンモリッツの雪道に置いてけぼりになっていた。しかし一抹の希望を捨てず、彼を家まで運び、波紋で治療を行い、ヨシュアはなんとか一命を取り留める。そしてその夜、ジョセフはシーザーの夢を見る。

9話(前・後) my cup runneth over
 お互いの気持ちを打ち明けた二人。ジョセフは一切の不幸がないかのように満たされていた。しかし、ジョセフの前からあの絵画が消えない。その時ジョセフは自分の胸の内に、罪のように重くのしかかるある想いに気がつき絶望する。しかしヨシュアはその想いを共有することを望み、受け入れる。

10話 Marocchino
 4月。ニューヨークには春が訪れようとしていた。ジョセフは久しぶりにヨシュアを誘ってメトロポリタン美術館へ行く。11月に観覧したマーク・ロスコ展が終わりを迎えるからだ。絵画の前に立ち、ジョセフは自分自身ともう一度向き合う。
 帰り道、二人はカフェに立ち寄りそこでヨシュアは新しい恋の気配を感じる。二人は未来に想いを馳せながら、出会った頃や2月の夜のことを語り合う。二人だけ思い出を二人だけの言葉で語り合えることに、ジョセフは確かな幸せを噛みしめるのだった。

 
 
 
 
 
 
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https://business-textbooks.com/coffee-type/ より

各話コーヒーの紹介

1話 Long Black
ロングブラック。エスプレッソをお湯で割った飲み物。
ヨシュアと出会った日に初めて注文するコーヒー。アメリカーノの別名とも言われるが厳密には作り方が微妙に違う。アメリカーノが好きなジョセフだったが、アメリカーノ(アメリカ人)という言葉の響きを好まないスージーを気にして、代用品として注文するようになった。

2話 Caffè mocha
カフェモカ。エスプレッソ、チョコレート、ミルク、ホイップクリームで作る甘い飲み物。
「とびきり甘いもの」を注文した際にヨシュアが作ってくれた。ジョセフのお気に入り。

3話 Con Panna “Style”
コンパナ。エスプレッソにホイップクリームの乗せただけのシンプルな飲み物。
美術館近くのカフェでヨシュアが注文した。ジョセフたちには苦すぎて、結局はちみつをたっぷりかけて飲んだため、あくまでコンパナ風。

4話(前・後) Affogato
アフォガード。バニラアイスにエスプレッソをかけたスイーツ。
アレンジにはジンジャークッキー、シナモン、キャラメルなどがよく使われる。クリスマス向け商品としてヨシュアが様々なレシピを考案していた。

5話 Americano
アメリカーノ。エスプレッソをお湯で割ったもの。
ジョセフが好きなコーヒー。修行時代、エスプレッソが苦すぎて飲めなかったのでお湯で割ってアメリカーノにしていた。酔ったジョセフがヨシュアにアメリカーノをせがむのはシーザーが恋しかったから。シーザーとの思い出の象徴。

6話(前・後) Caffè Latte
カフェラテ。エスプレッソにスチームミルクを入れた飲み物。少し泡(フォームミルク)が入っているものもある
ジョセフが好きなコーヒーその2。エスプレッソが苦くて飲めなかったジョセフにシーザーがよく作ってくれた。アメリカーノと同様に思い出の飲み物。

7話 Empty cup
空のカップ。聖書ではよく使われる表現。
人間は何かに満たされようと行動し、満たしてくれる物や人を探そうとする。しかし人は心に色々なものを抱え込んでいるうちは、誰かに与えることも、自分が満たされることもないという意味でもある。人は時に自分の心を一度空にする必要性を示している。

8話 Espresso
エスプレッソ。シーザーが愛飲していた飲み物。

9話(R-18) my cup runneth over
私のカップは溢れた。聖書の一文。私は満たされているという意味。
人間が持つ杯は満たされ、そして溢れるように作られている。満たされている時、その人は初めて誰かに与えることができる。

10話 Marocchino
マロッキーノ。モロッコ風コーヒー。エスプレッソ、ココア、チョコレート、フォームミルクなどで作る甘いコーヒー。
レシピは店によってわりと色々。ヨシュアがまだ作ったことのなかったコーヒーのひとつ。美術館へ行った帰りに立ち寄ったカフェで偶然お目にかかり、そしてヨシュアは新しい恋の気配を感じる。未知や未来の象徴。

 
 
 
各話のコーヒーのイメージ写真は一応内容のイメージに合わせて選びました。5話まではカップが1つですが6話以降はカップが2つになっています。彼らの心の距離感や心模様をイメージして選んでみたつもりです。
 
 
 
 
 
 
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登場した場所の小話

https://www.nytimes.com/2017/11/27/nyregion/chock-full-o-nuts-coffee-can.html


チョックフルオーナッツ Chock full o’Nuts
1950年代半ばあたりに大流行りしたコーヒーチェーン。今は全然見かけません。ちなみにヨシュアの働いていた店は完全に架空の店です。現在のチェーンはやはりスターバックスでしょうか。しかしそれ以外にもニューヨークにはローカルな美味しいコーヒー店がたくさんあります。
 
 
 
 

https://www.metmuseum.org/


メトロポリタン美術館
世界三大美術館のひとつ。常設展も企画展も非常に充実してて楽しいです。マーク・ロスコの絵画もいくつか収蔵されています。ジョセフとヨシュアは二度この美術館に訪れます。すぐ裏にはセントラルパークがあるので散歩やデートにオススメです。
 
 
 
 


ロックフェラーセンターのクリスマスツリー
ロックフェラーセンターの前に設置されるクリスマスツリー。スケートリンクもあります。初回点灯は1933年らしく結構長い歴史のあるツリーだったんですね。最近のクリスマスはめちゃ混みで長蛇の列に並ばないと見れないほどですが、1950年代はそんなに混んでなさそうです。ちなみにホリデー後や朝の時間帯などわりと空いてるので穴場かもしれません。
↓歴史が載ってるページ
https://www.goodhousekeeping.com/life/news/g4848/rockefeller-center-christmas-trees-history/
 
 
 
 

https://clickamericana.com/topics/beauty-fashion/vintage-gift-sets-makeup-perfume-skincare


1950年代のコスメギフト
二人がホリィのクリスマスプレゼントに選んだコスメギフト。これはわりとアメリカでは定番のホリデーギフトのひとつのようです。調べてみるとどれも本当に可愛くてびっくりでした。私はこの青いパッケージの商品を大変気に入りまして、今回イメージの参考にさせて頂きました。
参考サイト
https://clickamericana.com/topics/beauty-fashion/vintage-gift-sets-makeup-perfume-skincare
https://www.alamy.com/stock-photo/avon-cosmetics-1950’s.html?sortBy=relevant
 
 
 
 

Artichoke Basille’s Pizza より


アーティチョークバジルピザ Artichoke Basille’s Pizza
1950年代にはなかったんですが、現在グリニッチビレッジエリアにあるので採用させて頂きました。アーティチョークのホワイトピザはグラタンみたいなやみつき系の味で美味しいですよ。
 
 
 
 

https://www.minettatavernny.com/  より


ミネッタターバン Minetta tavern
こちらは1950年代にも存在してた老舗レストラン。パッと見閉店しているように見えるので割と知る人ぞ知るレストランなのかも。フレンチディップとエイジングビーフを使った高級ハンバーガーが売りです。とっても美味しいです。昔懐かしい雰囲気が味わえます。
 
 
 
 


非常階段
ヨシュアとジョセフが煙草を吸った非常階段。わりとニューヨークのビルにはよく見かける。なんとなくエモさがあって良いです。
 
 
 
 

https://yorkavenueblog.com/ より


アッパーイーストサイド
ジョセフが住んでいるエリア。高層ビルはあまり多くないエリアで、昔ながらの品のある街並みが特徴。1950年代はいわゆる高級住宅街だったそうです。今でも高級住宅街です笑
 
 
 
 


グリニッチビレッジ
ヨシュアが住んでるエリア。こちらも高層ビルの少ないビレッジ感のあるエリアです。様々な文化が盛える熱い街です。

 
 
 
 
 
 
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以下から少し話の内容に触れていこうと思います。ネタバレというか、自分で自分の小説を考察したり解説したりしてる感じです。自分で書いてるくせに第三者目線になってたりします。また、二次創作フィクションのわりに同性愛や歴史背景を真面目に考えちゃってるので、苦手な人はご注意ください。大丈夫そうならお進みください

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


ヨシュア・オドネルとは何だったのか

 ヨシュアはシーザーのようでシーザーではない人。死んで世界の一部になったシーザーの片鱗。もしくはシーザーの魂や波紋を偶然色濃く受け継いだ人。そんな感じ。なので結局やっぱりシーザーとは別人です。

 写真が1枚も残っておらず、20年も経って記憶が曖昧になる中で、「これがシーザーの顔だ!」と言い切れるものって本当にあるのだろうか。そう思うと、ヨシュアはジョセフの20年間の記憶の中で美化されたシーザーとそっくりだっただけかもしれない。もしかすると、スージーがヨシュアを見たら「全然似てないわよ?」とか言われちゃうかもしれない、と思っています。だからもしかするとヨシュアはシーザーより更に美しい顔をしているのかもしれません。

 私個人的には、人間が死んだ後、丸ごとそのまま転生することってあんまりないように思ってて、イメージとしてはスターウォーズのフォースみたいな感じになるんじゃないかと想像して書きました。だってもし世の中の人間が丸っと転生を繰り返してるなら、この世界はもっといい世界になってるんじゃない? なんて思ったりして。なので水の中に溶けるみたいに、死者はこの世界に溶けてぼんやりとどこかえ消えていく。
 数学の倍数じゃないですけど、2と4は8で出会うみたいな感じで、ヨシュアは世界中にバラバラに拡散したシーザーの魂や要素が偶然多く集まってひょっこり出てきた感じ。世界のあちこちにシーザーらしきものはあるけど、ヨシュアの中にシーザーが色濃く感じられる。そんなイメージです。
 波紋はフォースと似たイメージがあるので、波紋使いはそういう世界の色々なエネルギーを感じやすいし、シーザーの魂の片鱗がジョセフの波紋に呼び寄せられることはあるんじゃないかなと。ヨシュアとの出会いも、命日の出来事も、お互いの波紋が呼び寄せあった運命みたいなもので、ジョセフはそれに気がついてだいぶ救われたんだと思っています。ヨシュアの中には小さいけどシーザーの波紋があるので、ヨシュアを通してシーザーを感じることが出来る。ヨシュアはシーザーではないけれど、シーザーを垣間見ることは出来る、そんな感じです。

 

 ヨシュア君は優しいし顔はいいのでそれなりにモテるけど、付き合ってみると、「意外と地味で刺激が少ない、田舎臭い(貧乏くさいというか金がない)、仕事と勉強が忙しくてあんまり遊べない、子どもっぽい」とかそんな感じで一カ月くらいで都会思考の女性からズバズバふられていくタイプ。金がなくて将来性が不透明で真面目な男は遊び相手としても微妙すぎて、同年代はもちろん年上も年下からも反応が微妙そう。自分の平凡さが嫌いで誰かの特別になりたい!自分は特別な人間だと思いたい!と悩む若者そのものって感じの、いまいち冴えない青年でございます。頑張れヨシュア!
 ジョセフは社会的にも精神的にもそれなりに成熟した大人なので、ヨシュアの純粋さや、意外とお喋りなところとか、将来のために仕事や勉強を頑張ってるところなんかは愛らしさしか感じない。基本的にシーザー補正がかかっている ので、むしろヨシュア萌えを発動している。20年分の美化された記憶の中のシーザーは、美しくて、格好良くて、エロくて、男の中の男って感じなのでヨシュアのくるくる変わる表情なんてただのギャップ萌えでしかない。「お前、シーザーの顔でその顔はやめろ……」って心の中でブチ切れまくってる。もしくはそんな喜怒哀楽豊かな表情をするヨシュアにシーザーを見出しているジョセフは、ヨシュアに自分が見たかった理想のシーザー像(普通に楽しく日常を過ごしているシーザー)を見出しているのかもしれない。そんな二人。いや、本当に相性は大変よろしいと思うんですけどね。特別なお友達として末永く仲良くして頂きたいですね。

 でも実際、本当にヨシュアがジョセフの孤独やら何やらを理解していたかというと、微妙なところかもしれません。
ヨシュア氏はただジョセフが好きだっただけで、あんまり深く考えてない子だと思います笑 でも結果的にその「好き!」っていうピュアな気持ちで全力に振舞った結果がこういう形になったので結果オーライ。シーザーの魂がちょっと人より多く乗っているだけで、こんだけジョセフ大好きっ子になるんですから、シーザーさんのジョセフ愛は超BIGだったと思います。
 
 
 
 
 
 
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ジョセフ・ジョースター、38歳

 まだ大富豪、不動産王にはなってないけど着実に若手ながら台頭しつつあるくらいのお年頃。
一見すると、何もかもを手に入れているように見えるし、十分に満たされているはずなのに、いつもどこか寂しい。寂しいのか悲しいのかよく分からない気持ちになって一人でそっと涙を流しているような、社会の中を生きる一人の元貴族。そんなイメージです。
 誰がどう見ても恵まれていて豊かで素晴らしい人なのに自殺したりとか、そういうのってあるじゃないですか。手に入れたものを全て捨ててインディアンと暮らし始める世捨て人とかそういう人をたくさん見てきたので、彼らには彼らなり孤独や葛藤があるのだなって思っています。ジョセフ38歳はそういう感じの男なんですが、蓋を開けたら20年前に死んでしまった愛しい男のことが原因でしたって感じ。でも今回のヨシュアとの出会いを通して彼は一皮剥けたので、誠に勝手ながらこの後に大富豪へと成長を遂げていくと考えています。そしてやっぱり、スージーQは数奇な人生を生きるジョセフを直感的に理解できる唯一の女性だと思っております。

 
 
 
 
 
 
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色面の絵画/ジョセフの罪とは何だったのか

 絵画はジョセフの心そのものであり、ジョセフ自身でもある。この絵画についてあまり色を描写しなかったのは読者の思い描く色で読んで欲しかったところはあります。
 ジョセフはこの絵画と出会い、初めて自分の心の奥底に閉まっていたシーザーへの想いを意識します。ジョセフ自身おそらくずっと昔にシーザーへの気持ちは自分なりに整理し、家族や仕事に邁進していたと思います。しかしそれはあくまで蓋をして見ないようにしていただけで、ずっとそこにあったものでした。
 
 

https://www.metalocus.es/en より。ロスコの絵画


 
 

 
自分が守った世界のどこにもシーザーがいないこと。シーザーが世界の誰の記憶の中にもいないこと。そして、自分が知っているシーザーを、自分が愛したシーザーを、誰にも語ることが出来ないことが何よりも苦しかった。シーザーへの愛が何も知らない社会によって抹殺されていくのが耐えられなかった。そして、こんなに愛しているのに二度とシーザーへ自分の思いを伝えられないことを悔いているのだと思っていた。(9話より)
 

つまり、ジョセフが何を悩んでいたのかというと、

・救った世界の誰の記憶の中にもシーザーがいないこと(スージーや家族は除く)
・自分が愛したシーザーを誰にも語れないこと(シーザーと愛し合っていたことを語れないこと)
・シーザーに自分の愛をきちんと伝えないまま終わってしまったこと

 この3つが基本的にジョセフの心の葛藤でした。これは8話でほとんど解消されます。しかしジョセフの前から絵画は消えなかった。それはなぜか。それは1950年代という時代背景と20年という歳月が生んだ歪んだ罪の意識が原因なんですが、この辺りについて時代背景と一緒に少し補足していきますね。

 この話の舞台は1958、59年なんですが、このくらいの時代はまだまだ同性愛に対する理解はそこまで進んでおらず、LGBTQ最先端の土地であるニューヨークですら差別は根強かったそうです。実際に現実に起きた事件 ストーンウォールの暴動(リンクはwiki) などの一連の出来事を参考に、ジョセフやヨシュアの同性愛に対する価値観を考えていきました。このwikiを読んで頂ければわかると思いますが、同性愛者の権利が保証され出したのはなんと1969年頃~なんですね。もちろんそれ以前の1950年代から権利活動をしている人や、様々な出来事はありましたが、大きく動いて変わってきたのは実は1970~2000年にかけてという感じなんです。そのため小説内でヨシュアが街の人から罵声を受けたり、暴行を受けそうになったりするのは嘘でも誇張でもなく、実際に起きていたことを参考に書いています。小説の舞台にしたニューヨークのグリニッチビレッジエリアは、同性愛者解放運動のメインコミュニティでした。実際この街で起きた事件や暴動は世界の同性愛解放運動に大きな影響を与えたそうです。公園にストーンウォール国立記念碑なんかも建っていますので、実際訪れるとなかなか味わい深い雰囲気を味わえますよ。

 ちなみにヨシュアはどちらかというと同性愛云々より、1960~70年代に台頭した「ニューエイジ(リンクはwiki)」の思想の影響を先取りでちょっと受けているような感じです。これはいわゆるヒッピー文化とかに近い感じで、宇宙とのつながり、神秘性、転生思想、無意識などの世界に重きを置く考え方です。平凡な自分が嫌で何か特別なものを求めがちなヨシュア君はこういう新しい思想に影響されやすく、同性愛や転生などの価値観を引き連れたジョセフに急激に惹かれていったところはあります。

 そんな時代の中ですが、ジョセフは同性愛に対する偏見は少なかったとは思います。でも死んでしまったシーザーとの関係を第三者にわざわざ語りたいとは思えなかった。シーザーもジョセフも同性愛者ではなかった(バイセクシュアルの可能性はある)し、わざわざそれを口にしたところで誰も良い思いはしないと分かっていた。でもやはり一人で記憶や想いを抱え込み続けていると、それはなにかの罪のように、ジョセフの心を縛り上げていくことになる。
 ジョセフの心の葛藤/罪の意識はシーザーに抱かれた記憶そのものだったとも言えます。シーザーに身も心も抱かれていたジョセフは、社会的に誰にも言えない経験・愛を一人で抱えることになってしまった。

 
 

https://www.mark-rothko.org/rothko-chapel.jsp より。ロスコの絵画


 
 

 そんなジョセフの罪の意識を解放する手段として描きたかったのは「罪の共有」という愛の表現です。家族愛、無償の愛、友愛など、愛は愛でも色々な形がありますが、罪の共有という愛の形は必ずしも共感できなくても、孤独や葛藤の中に生まれるひとつの狂おしい愛の形なんじゃないかと思っています。結局ジョセフは20年間一人で愛を背負い、蓋をして生きてきたんですけど、蓋をしたところでダメなんです。向き合って向き合いつくしてようやく乗り越えるような不器用な生き物が人間なんだと思います。ジョセフは誰かと一緒に苦しみたかったんですね。それをヨシュアに打ち明け、ヨシュアが同じ経験を受け入れてくれたことでようやく、自分の孤独やシーザーの死を乗り越えることが出来たんじゃないかと思います。

 それにシーザーもジョセフに忘れて欲しくなかったのだと思いますよ。蓋をして忘れて生きて行こうとするジョセフの前に「俺を忘れようだなんて100年早いぜ!」って出てくるのは、「俺を忘れないでくれJOJOーーー!」って言いたいけど格好つけてるだけです笑

 
 

Terrance Siemon(Photo)より。 立ちはだかる姿はモノリスのイメージでした

 
 

 マーク・ロスコというアーティストは実際に存在している画家で、ドンピシャでこの物語と同じ時代に活動していた画家です。また本当に1958年に大学で講演会を行って、芸術の7つの要素を語ったと言われています。この7つの要素は本当に大好きな言葉で、今回の小説のベースにもなっています。


1つは “死に対する明確な関心”
2つ目は “官能性”
そして3つ目は “葛藤もしくは抑制された欲望”
4つ目は “皮肉” 、5つ目は “機知と遊び”
6つ目は “儚さと偶然”
そして最後。それは “希望” です
(3話より)

 
 
 


本当に重要なことは
この沈黙と孤独を終わらせ、
呼吸をして
再び腕を伸ばすことなんだ
(10話より)

 
 

 実際にロスコの絵画と対面し、これらの言葉に思いを馳せてみてください。きっと何か気が付くことがあると私は信じています。

 
 
 
 
 
 
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ジョジョという愛称

 今回ふたりの関係を進展させる引き金になったのは「ジョジョ」という呼び方です。5話(年明け)あたりから二人の関係は加速していきます。
 ヨシュアがずっと敬語で「ジョースターさん」と健気に呼び続けていたのは、ジョセフが意図的に「ジョジョ」と呼ばせないようにしていたからです。いきなり名刺を渡すし、時計も買い与えちゃうし、毎日足繁くコーヒーを買いに行っても、「ジョジョ」と呼ばせることには躊躇いがあったジョセフ。
 お陰様でヨシュアはジョジョと呼ばせてもらってないことに寂しさを覚え、嫉妬し、思わず「ジョジョ」と呼んでしまうことでジョセフの胸の内に触れてしまう。
 ジョセフの中にあったシーザーと、ヨシュアの中にあったシーザーが出会うことで、二人の間の感情が一気に加速してしまったような感じです。読み返してみると5、6話からちょっと駆け足すぎた感は否めないんですけどね。そんな感じです。力不足ですみません。。

 
 
 
 
 
 
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腕時計の意味

 ジョセフがヨシュア(シーザー)と同じ時の中を生きたいという願いそのもの。それを買い与えてしまうところにメンヘラもびっくりなBIGラブを感じちゃう。

 9話でヨシュアが「時計が止まっているんです」と言います。時計が止まっている(=時間の流れている現実世界にいない。もしくは過去の時間で止まっている)という意味なのでヨシュアは「取り残されている」とも言います。つまり、「あなたは過去に囚われたままだけど、俺も一緒にここにいますよ」という意味や「時計が壊れてる間は現実世界を捨てて、あなたとその罪を被りますよ」という意志表示です。そのため、二人はあの晩しか結ばれる機会はなかったし、時計が動き出した後の世界は二人が帰るべき世界で、生きるべき現実です。だからあの晩以降に二人が肌を合わせることは決してない。その後も二人の交流は続いていくと思われますが、あの日の出来事は一回限りの二人だけの秘密。シーザーとジョセフの秘密の関係と同じように、ヨシュアもジョセフと誰にも明かすことのない秘密を持った。つまり、20年間ジョセフが背負っていた孤独な愛を、ヨシュアも同じように背負うことを受け入れた。罪の共有とはそういうことです。

 この先ヨシュアには新しい彼女が出来そうだし、ジョセフには守るべき家族がいるので、二人は深く愛し合いながらも親友付き合いをしていきます。相手を独占することや身体を求め合うことだけが愛ではないとよく分かっている二人はたぶん、非常に家族や仲間を大事にしていくと思います。
 ずっと一緒に歩むことはできないし、いつも隣にいることもできない。この先お互い遠く離れて生きていくかもしれないけど、一緒にいる時だけは二人だけの言葉で二人だけの話ができる。もしシーザーが生きていたら、二人はそんな関係になってたんじゃないかと思います。それがジョセフの夢見た未来であり、何よりも幸せなことなんじゃないかと思っています。

 
 
 
 
人生で一番楽しい瞬間は、
誰にも分からない二人だけの言葉で、
誰にも分からない二人だけの秘密や楽しみを、ともに語り合っている時である 
―ゲーテ

 
 
 
 
 
 
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ヨシュア萌え発動中。IFとかその後の物語

 色々真面目に書いてきたんですけど、途中からもうひたすらヨシュア萌えが凄すぎてやばかった!ジョセフもうじうじしてて可愛いんですけど、ヨシュアが天使過ぎて。なんかもうシーザーどこ行った!って感じになってたんですけど、ヨシュアが勝手に脳内で走り回ってたので半分くらいヨシュアに導かれながら書いてました。
 一応これで大枠の話は終了しましたが、この二人がくだらない会話してるだけの話とか、ちょっとIFで同棲したりスケベしてる話とか普通に書きたい。


 

 実はヨシュアのせいで何度かプロットが変わり、話が暴走しかかったんですよね笑 ひとつは9話。大枠の話は考えていたんですが、当初はスケベなしの会話劇の予定でした。しかし欲望に負けました。おかげ様でジョセフの罪について3日くらい悶々と考えるはめになりました。くそぉヨシュアめ……。

 何にせよヨシュアを抱きつぶすジョセフはなんぼあってもいい……。いつもはヨシュアに振り回されているジョセフが、ベッドの上では全力でヨシュアを抱きつぶして泣かせてるのがいい…… ジョセフも一度くらいヨシュアに抱いて欲しいとかあるかもしれないけど、そもそもご都合波紋の世界なので、波紋が使えないヨシュアがタチだと色々身体的に大変です。ジョセフの波紋マッサージありきのスケベスタイルなのでヨシュアが泣こうが喚こうがやはりジョセフ大先輩に宜しくお願いして頂いてください。お願いします。あ、全部IFですよ。IFなら何したっていいですから、二次創作に二次創作するのが二次創作の本番なので。ジョセフの会社でインターンするヨシュアとか、社会人になった後再会して思わぬ沼にハマり落ちて行く二人とか、そういうのは絶賛脳内上映中です。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
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総括・イメージ曲とか

 日を置いてちらっと読み返しただけでも、力不足感は否めないんですが、お陰さまでなんとか書き上げることが出来ました。小説を書いたのが一年ぶりということもあり、序盤の文章の硬さが気になったり、後半は後半で急展開感が否めなかったり、命日に間に合うよう端折ったエピソードもあったり……で、多少心残りはあるんですが、この話はいったんこれにて終了となります。反省点はあるけど、やっぱり書いてよかったと思えるので最後まで書けて本当に良かったと思っています。
 長々と書いてきましたが、ここまでお付き合い頂き本当にありがとうございました。IFか何かは時々落書きで描くかもしれません。これからも、ヨシュアとジョセフをそっと見守り頂ければ嬉しです。そしてまた次の話も気になれば読んで頂けたら幸いです。それではまた!

 
 

イメージ曲「In My Life」
唄:The Beatles 作詞作曲: John Lennon & Paul McCartney
リンク先:https://lyriclist.mrshll129.com/beatles-in-my-life/
ジョセフも大好きビートルズの名曲。たくさんの人と出会い、別れながら、家族や未来を大事にするジョセフのテーマソングかなと思っています。

 
 
 

イメージ曲「あなたの願いを歌うもの」
唄:蓮花 作詞作曲:doriko (music, lyrics) Featuring: 初音ミク イラスト:Chiho-P より
リンク先: https://www.uta-net.com/movie/235222/
こういうストレートな日本語曲もいいなと。ボーカロイドの隠れた名曲。今回の小説を書きながら何度も聞きました。